翻訳:陳 月縁
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
国際山地旅游連盟(IMTA)は、中華人民共和国国務院の批准を受けて設立された、世界初の「山岳観光」をテーマとする非政府・非営利の国際組織である。観光の発展を目的に、「山岳資源の保護」「山岳文化の継承」「山岳経済の促進」「山岳住民の幸福の向上」を理念に掲げている。主管部門は中国文化旅游部であり、本部(秘書局)は貴州省貴陽市、連絡部は北京に置かれている。
連盟のメンバーは、世界各地の山岳国家・地域の観光組織や非営利団体、観光関連企業、観光専門教育機関、アウトドアスポーツ団体、さらには観光分野における著名な専門家・学者・経営者で構成される。連盟主席にはフランス共和国元首相のドミニク・ド・ビルパン氏、副主席には中国国家旅游局の元局長であり全国政協常委の邵琪偉氏が就任。秘書長は外交部前副部長で国務院僑務弁公室副主任を務めた何亜非氏、執行秘書長は元貴州省旅游局局長で旅行業界のベテランである傅迎春氏が務めている。
国際山地旅游連盟(IMTA)本部より
2020年11月10日、貴陽市の連盟本部において「2020国際山地旅游連盟年次総会」の記者会見が行われた。傅迎春執行秘書長によれば、本年次総会は「ポスト新型コロナ時代における山岳観光発展の道」をテーマとし、世界的な情勢に即した内容であることから、連盟メンバーや観光業界から高い関心と積極的な参加を得ている。
本会議は国際山地旅游連盟の主催により、国連世界観光機関(UNWTO)、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)、太平洋アジア観光協会(PATA)、世界旅行経済フォーラム(GTEF)、世界観光連盟(WTA)、世界観光都市連盟(WTCF)、中国・ASEANセンター、世界運河歴史文化都市協力機構(WCCO)、中国風景名勝地協会など、国際的に著名な組織や機関からの強力な支持を受けて開催された。
2020国際山地観光連盟 年次総会記者会見
2020年11月18日、国際山地観光連盟(IMTA)の年次総会が貴陽市にて開幕した。本総会には、国際機関、IMTA加盟メンバー、観光業界の専門家・学者、企業代表など300名を超える参加者が集まり、新型コロナウイルス感染症の影響後における観光産業の回復をめぐり、オンラインとオフラインを併用して「ポスト・コロナ時代における山岳観光発展の道」をテーマに議論が交わされた。
2020国際山地観光連盟 年次総会が貴陽市で開幕
開幕式には、国際山地観光連盟副主席の邵琪偉氏、貴州省委員会常務委員・宣伝部部長の盧雍政氏、貴州省人民政府副省長の胡忠雄氏、同連盟秘書長の何亜非氏、中国文化観光部国際交流協力局局長の謝金英氏、在中国ネパール大使マヘンドラ・バハドゥル・パンデ氏、在広州ペルー総領事イヴァン・アレグザンダー・シルバ・リビエラ氏、在重慶日本国総領事館副総領事の斉藤憲二氏、在中国フィリピン大使館観光参事官アーウィン・バラン氏、在中国タンザニア大使館文化観光参事官ルセケル・ソロモン・ゲワサ氏、ドイツ・バイエルン州中国代表処首席代表ルシエ・エレオニア・マークル氏、在広州スペイン観光領事アナ・マリア・コルドバ・ラファンテ氏、さらに貴州省文化観光庁党委員会書記兼庁長の張玉広氏、国際山地観光連盟執行秘書長の傅迎春氏らが出席した。
式典では、国際山地観光連盟のドミニク・ド・ビルパン主席が開幕の挨拶を行い、続いて秘書長の何亜非氏が2020年度活動報告と2021年度の活動計画を発表した。参加者は約300名に及び、国際機関やIMTAメンバー、観光分野の専門家・研究者、企業家らが一堂に会し、ポスト・コロナ時代における国際山岳観光の発展について、オンラインとオフライン双方を活用して活発な意見交換を行った。
IMTAドミニク・ド・ビルパン主席の挨拶
本年、新型コロナウイルス感染症は世界の山岳観光産業にかつてない衝撃と深刻な影響をもたらした。中国においては感染拡大が効果的に抑制され、観光業界も回復の兆しを見せている。しかし世界全体に目を向けると、依然として感染症の制御が十分に進んでおらず、一部の国や地域では拡大が続いているのが現状である。こうした中、世界の観光産業は多くの課題と将来の不確実性に直面している。
IMTA邵琪偉副主席の発言
今回の2020年国際山地観光連盟年次総会は、「ポスト・コロナ時代における山岳観光発展の道」を主要テーマとして開催された。会議期間中、参加者はこの重要な課題に焦点を当て、感染症収束後の山岳観光の回復と質的向上をいかに推進するかについて議論を重ねた。これらの討議を通じ、世界の山岳観光の発展および観光産業全体の回復に向けて、理論的指針と実践的支援が提供された。
貴州省委常委・宣伝部部長盧雍政氏の発言
開幕式において、国際山地観光連盟(IMTA)は、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)、太平洋アジア観光協会(PATA)、世界観光都市連合会(WTCF)、世界観光連盟(WTA)、中国-ASEANセンター(ACC)、世界運河歴史文化都市協力機構(WCCO)、中国風景名勝地協会(CNPA)などの主要国際観光機関・業界団体と、友好協力のもと戦略的提携協定や了解覚書に調印した。これにより、各組織の強みを生かし、手を携えて世界の観光産業の回復と発展に寄与していくことが確認された。
IMTA何亜非秘書長の発言
国際山地観光連盟は設立以来、「会員間の交流と協力のためのプラットフォーム」「山岳観光における投資・協力と革新のためのプラットフォーム」「山岳観光産業の発展研究と評価のためのプラットフォーム」という三本柱の構築をめざし、積極的に取り組んできた。とりわけ、投資・協力と革新、ならびに発展研究と評価をさらに推進するため、本年の年次総会において新たに「専門家委員会」と「投融資委員会」が正式に発足した。邵琪偉副主席と何亜非秘書長が共同でその設立を宣言し、連盟の今後の発展に向けた新たな一歩となった。
開幕式では「IMTAマウンテンツーリズム賞」の授賞式が行われた。国際山地旅游連盟が同賞を設立し、募集を開始したのは今回が初めてである。新設されたのは、「マウンテンツーリズム発展賞」「最優秀デスティネーション賞」「最優秀アウトドアスポーツ賞」「最優秀ハイキングルート賞」「最優秀キャンプ地賞」の五部門である。これらの賞は、既存の山岳観光資源や関連産業を整理し、各分野における模範を示すことで、山岳観光産業を活性化させ、自信を回復させ、業界主導のモデル効果を生み出すことを目的としている。
年次会議では、第一回中国セルフドライブツアー観光産業連合会会長サミットや、貴州の代表的なセルフドライブツアーコースの推進活動をはじめ、「貴州省における山岳観光レベルの向上」をテーマとする企業家フォーラム、2020年「世界名山対話」、2020年「IMTAマウンテンツーリズム賞」ロードショーとビジネス交流会、新しい需要・市場・消費をめぐる「8・9・00」コンセプト会合、「世界名山と貴州山岳観光の対話」写真展、さらには山岳観光と文化展示会など、多彩なプログラムが展開された。
なお、2018年の国際山地旅游連盟年次総会では、第一回「世界名山対話」が開催され、日本代表の入倉博文氏が世界文化遺産・富士山を紹介した。富士山が世界文化遺産に登録された後、環境保全や資源整備の取り組みが進められ、それに伴い周辺地域の観光業も大きく発展したのである。
日本国駐重慶総領事館の斎藤憲二副総領事は、IMTAの傅迎春執行秘書長と交流を行い、貴陽中国旅行社の姚武強部長がこれに同行した。
今回の2020年「世界名山対話」では、日本代表として山岳およびエコツーリズムの専門家である荒井一洋氏がビデオ会議に参加し、北海道・大雪山を紹介した。大雪山観光には、スキー、登山、クロスカントリーマウンテンバイクといったアウトドアアクティビティのほか、森林浴などの健康志向型体験、アイヌ民族の歴史と文化を学ぶプログラム、農産物収穫体験、さらには釣りやバードウォッチングなど多彩な内容が含まれる。また、大雪山では「食と健康」「養生と歴史」「文化と四季」といった要素を組み合わせることで、訪れる人々が繰り返し訪れても新たな魅力を享受できる仕組みを整えており、多様なニーズに応えることで、高付加価値型の都市型氷雪レジャー観光地として発展している。
今回の世界名山対話には、スイスの「アルプスの少女ハイジ峰」、ネパールのチョモランマ国家公園、インドネシア・ロンボク島のユネスコ世界地質公園なども参加し、国際的な広がりを見せた。
第一回中国セルフドライブツアー観光産業連合会会長サミットでは、貴州省が伝統的なセルフドライブツアーコースの推進活動を実施。「エコロジー横断旅行」「最も美しき田舎観光」「温泉養生の旅」「革命文化の旅」「民族情緒を深く味わう旅」「マウンテンスポーツの旅」という六つの推奨コースを発表し、多彩な文化資源を有する貴州の観光目的地や人気スポットの拡大を目指している。
コース1:エコロジー横断旅行
貴陽市を出発し、マイカーで大自然の山岳地帯を走り抜け、国内最大規模のミャオ族集落・西江千戸苗寨を訪れる。
コース2:最も美しき田舎観光
貴陽市を出発し、佛頂山の温泉町と周辺の景勝地を巡り、その後、著名な宿泊施設で休息。
コース3:温泉養生の旅
貴陽市を出発し、佛頂山の温泉町、梵浄山、滙善谷の温泉や周辺景勝地を訪ね、その後、名宿での滞在を楽しむ。
コース4:革命文化の旅
貴陽市を出発し、赤水周辺の景勝地を巡り、赤水市で宿泊。
コース5:民族情緒を深く味わう旅
貴陽市を出発し、岜沙、肇興、荔波小七孔、瑶山古寨など、貴州の多民族文化を色濃く残す観光地を訪れ、民族的な情緒を体感する。その後、景勝地の宿で休息。
コース6:マウンテンスポーツの旅
貴陽市を出発し、妥楽、勝境温泉、梅花山(スキー場)、六盤水、万峰林、興義、平遠古鎮などを巡る。
今回の年次会議は、オンラインとオフラインを組み合わせ、屋内外を有機的に連携させる革新的な方法を採用。Sina News、Colorful Guizhou News Website、Zhongwang Newsアプリ、Facebook、Twitterなど、国内外の多様なメディアプラットフォームを通じて、壮大なイベントの模様をリアルタイムで広く発信した。
国際山地旅游連盟は、2017年の正式設立以来、観光産業における国際交流と実務協力を積極的に推進してきた。「山岳資源の保護、山岳文明の継承、山岳経済の促進、山岳民衆の幸福」という理念を掲げ、山岳観光産業の発展に関する経験を整理・共有し、その促進に努めている。連盟は、会員間の交流と協力、産業発展の研究と評価、投資促進、広報強化といった活動のプラットフォームを構築するとともに、「国際山岳ツアーデー」や「世界名山対話」といったブランド事業を展開してきた。さらに、3年連続で年次会議や国際山岳ツアー大会関連イベントを開催し、会員へのサービス提供や国際協力の推進、そして貴州との対話を可能にする重要な場を形成している。設立以来、連盟は常に新たな発展を模索しており、特に2018年以降は、本部ビルの建設、対外交流・連携の拡充、会員サービスの充実、学術研究の推進といった成果を挙げている。
2020年には、多様なチャネルを通じて国際的な連携をさらに強化し、ロシア、タジキスタン、インドネシア、ネパール、ミャンマーおよび中国の6か国・26機関が新たに加盟した。その結果、会員総数は181に達し、内訳は国外会員101、国内会員71、個人会員9となった。加盟国数は一層拡大し、会員構成や分布はより合理的なものとなり、連盟の「友情の輪」は一段と広がりを見せている。
2020年国際山地旅游連盟年次総会の閉幕後、参加者は貴州省の世界自然遺産・赤水と、「中国国酒」と称される茅台酒の産地である茅台鎮を視察した。