翻訳:楊 依林
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
世界に名を馳せるランドマークホテル
「ランドマークホテル」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのがフェアモントホテルです。フェアモントホテルは、世界で最も多くの歴史的建築物を擁するホテルブランドとして知られています。代表的なものには、カナダ・バンフのバンフ・スプリングス・ホテル(Fairmont Banff Springs)、ロンドンのサヴォイ(Savoy)、ケベックシティのシャトー・フロントナック(Château Frontenac)、ニューヨークのプラザ(The Plaza)、そして上海の和平飯店(Peace Hotel)が挙げられます。
フェアモント・ホテルズ&リゾーツは、現在アコーホテルズ傘下の高級ホテルブランドです。その歴史は1883年にさかのぼります。ヴィクトリア女王の娘ルイーズ王女がバミューダを訪問した際、現地の実業家トロット氏は王女への敬意を表すため、バミューダに高級ホテルを建設することを決意しました。こうして1885年に誕生したのが「プリンセス・ホテル(The Princess)」です。フェアモント系列の中で最古のこのホテルは、現在「ハミルトン・プリンセス&ビーチクラブ・ア・フェアモント・マネージド・ホテル(Hamilton Princess & Beach Club, A Fairmont Managed Hotel)」として名を残しています。
フェアモントのブランドストーリーの始まり
1907年には、ブランド名を冠した最初のホテル「フェアモント・サンフランシスコ(The Fairmont San Francisco)」が開業しました。これを契機に、フェアモントのブランドストーリーは本格的に歩みを始めます。
開業直後から、同ホテルは米国大統領が訪問時に宿泊する格式あるホテルとして知られるようになり、地元の華やかな舞踏会や歴史的行事の舞台としても確固たる地位を築きました。たとえば、国連憲章が調印されたのもこのホテルであり、アメリカの著名な歌手トニー・ベネットが名曲「I Left My Heart in San Francisco」を初めて披露したのも、館内の伝説的なナイトクラブ「ヴェネチアン・ルーム(The Venetian Room)」でした。
フェアモントの伝説 ― プラザホテルから世界へ
同年、フェアモント傘下としてニューヨークに誕生したのがプラザホテル(The Plaza)です。プラザホテルは数え切れないほどの著名人を迎え入れ、アメリカ史において最も伝説的なホテルのひとつとされています。「プラザでは些細なことは何も起こらない」という言葉が示すように、その存在自体が常に注目の的でした。ニューヨークを訪れる有名人の定宿として知られ、もはや「プラザ」と「セレブリティ」は同義とさえ考えられています。
このホテルはニューヨークの発展を見守り、街の歴史の変遷を映し出してきました。1959年には名作映画『ザ・ビースト』の舞台となり、これはハリウッドで初めて実在のロケーションで撮影された映画として知られています。その後も数多くの映画の撮影地として使用され、スクリーンを通じてプラザの名を世界に広めました。
フェアモントブランドの広がり
その後、フェアモントは歴史ある名門ホテルから新設の高級ホテルまで次々と傘下に収めていきました。たとえば、カナダのフェアモント・バンフ・スプリングス(Fairmont Banff Springs, 1888)、ロンドンのサヴォイ(Savoy, 1889)、カリフォルニアのフェアモント・デル・マー(Fairmont Del Mar, 2015)、インドネシアのフェアモント・ジャカルタ(Fairmont Jakarta, 2015)などがその代表例です。
しかし、フェアモントは単にホテルを買収するだけではありません。それぞれのホテルが持つ独自の文化や歴史を尊重し、その個性を保ちながらブランドの精神を融合させてきました。サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、モンテカルロ、そしてアジア各地に展開する70以上のホテルは、いずれも「心に残る滞在」を提供することを使命としています。そのため、多くのフェアモントホテルは「伝説」と呼ばれるにふさわしい存在となっています。
世界的ラグジュアリーブランドへ
高級ホテルやリゾートが増えるにつれ、「フェアモント」という名前は壮麗な建築、心躍る体験、そして印象深いサービスと強く結びつけられるようになりました。フェアモントホテルズは、世界中の富裕層や著名人、国王や王妃、大統領や首相といった要人を迎え入れてきました。
数々のランドマークホテルは、地域の都市開発に不可欠な存在であり、歴史的出来事の舞台となり、社会の変化をも映し出してきました。小さなホテルグループから始まったフェアモントは、1999年にカナディアン・パシフィック・ホテルズ(Canadian Pacific Hotels)がアメリカのフェアモント・ホテルを買収し、「フェアモント・ホテルズ&リゾーツ」へと改称。その後、世界的な高級ホテルグループのリーダーへと成長し、現在では世界56か所以上でホテルを運営しています。
フェアモントは、歴史的な出来事や華やかなパーティーの舞台となってきただけでなく、日々の滞在においても、純粋で唯一無二の価値ある体験を提供することを誇りとしています。ゲストは、ウィスラー(Whistler)の手つかずの丘陵でスリルある滑空を楽しんだり、スコッツデール(Scottsdale)で心待ちにしたスパを堪能したり、ゴルフ発祥の地であるスコットランド・セントアンドリュース(St Andrews)でプレーすることもできます。また、ザ・フェアモント・エンプレス(Fairmont Empress)では静かな午後にアフタヌーンティーを楽しみ、フェアモント・ケアラニ(Fairmont Kea Lani)ではハワイ文化に触れるボートツアーに参加することも可能です。フェアモントが提供するのは、贅を尽くした客室や壮麗なロビー、最高級の料理にとどまりません。そこには、訪れる人々にかけがえのない思い出を紡ぐ体験があります。
フェアモント・ホテルズは、持続可能な観光の先駆者であると同時に、大規模ホテルチェーンとして独自の「グリーン・パートナーシップ・プログラム」を導入し、環境保護を日常のサービスに組み込んでいます。このプログラムは持続可能な発展に焦点を当て、廃棄物管理、エネルギー効率、水資源の節約といった分野における課題改善に取り組んでいます。さらに、地域団体との協働や協力プログラムを通じて、持続可能性に関する理念を地域社会に広めています。取り組みには、ホテル厨房から出る有機廃棄物のリサイクルや再利用、エネルギー効率の高い照明の導入、屋上ハーブガーデンの整備、グリーンエネルギーの購入、さらには生活必需品や食品を必要とする人々への提供などが含まれます。
『ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー』誌は、これを「北米ホテル史上、最も包括的な環境保護プロジェクト」と評しました。フェアモント・ホテルズは持続可能な観光への貢献が高く評価され、世界観光旅行評議会(WTTC)から「2006 Global Tourism Business Award」を受賞しています。
2018年時点で、フェアモント・ホテルズは世界に74軒、計29,900室を展開しており、2020年には30か国に91軒、36,000室へと拡大することが見込まれていました。その中には、ここ貴陽のフェアモントも含まれています。
フェアモント貴陽
フェアモント貴陽は、アコーホテルグループ(Accor)と貴州宏立城が共同で建設した国際的な高級ホテルで、中国貴州省貴陽市南明区花果園路88番街区B区に位置する。すなわち、貴陽国際貿易センター・タワーBにそびえるツインタワーの西塔である。ツインタワーの高さは335メートルに達し、市の中心部にそびえ立つランドマークとして存在感を放っている。周囲には、グローバル・ビジネス・イルカ広場や湿地公園、古典芸術通り、超高層オフィス群、さらには国立アハ湖湿地公園など、多彩で大規模な商業・文化・娯楽施設が集積している。
ホテルには325室の個性豊かな客室を備え、世界各国の料理を提供するレストランや、複数の専用宴会場・会議室を有している。なかでも、6階部分に900平方メートル、5階部分に800平方メートルの大宴会場を擁し、国際的なイベントや会議にも対応可能である。客室は豪華かつエレガントな内装が施されており、高層階からは市街地を一望でき、天空都市のような圧倒的な眺望を楽しむことができる。
立地条件も極めて優れており、貴陽北駅からは約8.6キロメートル、貴陽龍洞堡国際空港からは約15キロメートル、国立アハ湖湿地公園へは約7キロメートルとアクセスも良好である。ここでは都市の活気と自然の景観が調和した魅力を存分に味わえる。
フェアモントホテルズ・リゾーツの展開
フェアモントホテルズ・リゾーツは、世界的に知られる高級ホテルブランドであり、中国国内には現在6つのホテルを展開している。すなわち、上海平和飯店(1929)、フェアモント・ヤンチェン湖・昆山(2009)、フェアモント北京(2010)、フェアモント南京(2014)、フェアモント成都(2016)、フェアモント武漢(2019)である。
なかでも上海平和飯店は、2010年に3年間の大規模修復を経て再開業し、21世紀にふさわしいグローバルラグジュアリーホテルとして新たな歴史を刻んでいる。創業から1世紀以上を経た今も、外灘の象徴的存在であり続けている。
このホテルは、アメリカのジョージ・マーシャル将軍、映画俳優チャールズ・チャップリン、劇作家ジョージ・バーナード・ショーらをはじめ、世界の政治家や芸術家、著名人を数多く迎えてきた。また劇作家ノエル・カワードは、このホテル滞在中に後にトニー賞を受賞する舞台『プライベート・ライヴズ』を執筆したとされる。
11階建ての上海平和飯店は、外灘に面しており、黄浦江を望む絶景はもとより、対岸の浦東新区の都市景観まで見渡すことができる。まさに、歴史と文化、そして現代性が融合する唯一無二のホテルである。