翻訳:呉 侣
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
統計によれば、貴州省には2万基を超える橋が存在する。ここには、世界に現存するあらゆる形式の橋が見られるといっても過言ではない。世界の「橋の高さランキング」上位100のうち、中国の橋は80基以上を占め、その多くが貴州に集中している。貴州に建設された百メートル級の橋の数は、ヨーロッパ全域に存在する大橋の総数をも凌駕するほどである。
世界最高橋ランキングのトップ10には、中国の橋が8基含まれる。パプアニューギニアの海吉焦峡谷パイプライン橋(高さ393メートル、世界7位)と、メキシコのバルアーテ橋(高さ390メートル、世界8位)がかろうじてランクインしているが、順位はそれぞれ7位と8位にとどまる。これに対し、トップ10のうち5基が貴州省に所在し、さらに上位20基のうち11基を貴州の橋が占める。こうした事実から、貴州は「橋の博物館」と称されるにふさわしく、その数は2万基以上に及ぶ。これらの橋は険しい山岳や深い峡谷を越え、交通網を形成すると同時に、壮観な景観を構成している。そのため「世界の道路と橋といえば中国、中国の道路と橋といえば貴州」と評されている。
世界一高い橋として知られるのが、杭州—瑞麗高速道路に架かる都格北盤江大橋である。2016年12月に開通し、2018年6月には国際橋梁大会の「グスタフ・リンドサール賞」を受賞した。雲南省と貴州省の協力により建設され、全長1,341.4メートル、高さ565メートルに達する。この高さは200階建ての超高層ビルに相当し、海外最高とされてきたパプアニューギニアの海吉焦峡谷橋を100メートル近く上回る。
都格北盤江大橋は貴州省六盤水市水城県都格鎮と雲南省宣威市普立郷を結び、杭瑞高速道路の主要橋梁3基のひとつである。
「北盤江」とは「北方の曲がりくねった川」を意味し、貴州を南北に流れて省を東西に二分する大河である。この峡谷における橋梁建設は2001年に始まり、同年、世界最高(当時)となる高さ275メートルの鉄道橋が完成した。2003年12月28日には、北盤江を跨ぐ関興高速道路の北盤江大橋が開通し、高さ366メートルで当時の世界最高記録を更新、アジア随一の大橋となった。この橋は世界で初めて高さ300メートルを超えた吊り橋であり、米国コロラド州のロイヤル・キャニオン大橋(74年間世界一を保持)をも凌駕した。
さらに北盤江には、世界18位の高さを誇る滬昆高速道路北盤江大橋がある。貴州省関嶺県と晴隆県の境界に位置し、主橋は636メートルに及ぶ単純支間鋼トラス吊橋で、全長964メートル、幅28メートル、高さ318メートルを測る。2008年11月27日に開通した当時は、世界最大規模の鋼トラス吊橋であった。北盤江沿いには、平均50キロごとに壮大な道路橋や鉄道橋が築かれており、その光景はまさに「橋の王国」を体現している。
鴨池河大橋
世界最大の径間を誇る鉄トラス斜張橋である鴨池河大橋は、貴陽—黔西高速道路に架けられ、2016年7月に開通した。2018年6月11日には、北盤江第一橋とともに国際橋梁大会で「グスタフ・リンドサール賞」を受賞している。
鴨池河大橋は高さ434メートル(世界第5位)、主径間800メートル、全長1,450メートルに及ぶ。鉄トラス斜張橋としては世界最大の規模を誇り、特に800メートルという主径間は同種橋梁の中で世界最長である。橋は「烏江源百里画廊」に位置し、貴陽市観山湖区から45キロ、畢節市黔西県から25キロの地点に建設された。
川面から橋面までの高さは434メートルに達し、両端はトンネル構造を採用。橋幅は28メートルで、主塔はH型の索塔形式である。貴陽側の塔の高さは243.2メートル、西岸の塔は258.2メートルに及ぶ。これほど大規模な斜張橋がわずか3年で完成したこと自体が世界記録とされ、注目を集めた。なお、「鴨池河」とは烏江上流の地名であり、烏江流域には高さ100メートルを超える橋梁が数多く架けられている。その数は世界最多を誇る。
清水河大橋
清水河大橋は、世界第4位の主径間長を持つ山岳地帯の鉄トラス吊橋であり、貴陽—甕安高速道路に架けられている。主径間は1,130メートルに及び、貴州省最大、アジア山岳地帯においても最大規模の鋼トラス吊橋である。
主塔の頂上から清水河の水面までの垂直距離は540メートルに達し、橋面の高さは406メートル(世界第6位)となる。2013年7月に着工し、2015年12月31日に開通した。これにより、貴州省は西部で初めて「県から県へと直結する高速道路」を実現した地域となった。
清水河大橋は、建設期間の短さにおいても世界記録を更新しており、わずか3年で主径間1,000メートル超の吊橋を完成させたのは人類史上唯一の事例である。
六広河大橋
世界トップ10に入る峡谷橋のひとつが、息烽—黔西高速道路に架かる六広河大橋である。景勝地・六広河を跨ぐこの特大斜張橋は、峡谷橋梁の代表格とされている。
全長は1,280メートル、主径間は580メートル、高さは375メートル(世界第9位)を誇る。主橋は双塔・双索面形式で、H型の索塔を採用。両岸の主塔はいずれも高さ242メートルで、薄壁中空の花瓶形索塔が特徴的である。
橋全体には184本の斜張索が使用され、その総重量は約2,036トンに達する。壮麗な姿と高度な技術は業界関係者から高く評価されており、貴州省における最大の双塔・双索面斜張橋である。なお、烏江流域においては鴨池河大橋に次ぐ規模を誇る。
壩陵河大橋(Ba Ling He Bridge)
世界の山岳地帯における大スパン橋の中でも、主径間とトンネル式アンカレッジの規模において世界一を誇るのが、鎮寧から勝境関へ至る高速道路に架かる壩陵河大橋である。2005年4月18日に着工し、2009年12月23日に開通した。主径間は1088メートル、全長2257メートルに及び、最大橋脚の高さは202メートル、橋の高さは370メートルで世界第10位に数えられる。西岸のトンネル式アンカレッジは74.34メートルに達し、世界最大規模を誇る。完成当時、中国国内で最長、世界第6位の大スパン鋼トラス吊橋となり、貴州省のみならず全国の橋梁史において技術的に最も高度な橋と称された。まさに「中国の誇り」として位置づけられたのである。
壩陵河大橋は北盤江の支流・壩陵河峡谷を跨ぎ、両岸は急峻な地形で谷の深さは400~600メートルに及ぶ。東には雄大な黄果樹大瀑布、西には三国時代の古道「索馬古道」、南には神秘的な「紅岩天書」、北には滴水灘瀑布が広がり、橋の完成によって黄果樹景勝地に新たな世界的名所が加わった。霧が立ち込める日には、遠方から見る大橋がまるで雲海に浮かぶ紅の回廊のように見える。さらに毎年「壩陵河国際低空パラシュートチャレンジ」が開催され、世界各国から集うスカイダイバーがパラグライダーやベースジャンプで峡谷を舞い、観光とスポーツの両面で注目を集めている。
壩陵河大橋は「関索嶺大橋」とも呼ばれる。所在地の関嶺県関索嶺は、三国志に登場する関羽の子・関索に由来する。『三国志』によれば、蜀漢の丞相・諸葛亮が南征を行った建興3年(225年)、関索将軍はこの地に駐屯したと伝えられている。
抵母河特大橋(Dimu River Bridge)
世界の高架橋ランキング第12位に位置する抵母河特大橋は、水城県董地郷にあり、抵母河峡谷を跨ぐ。杭瑞高速道路の貴州・畢節から雲南省都格へ至る路線上に架けられた三大橋のひとつである。主径間は538メートル、高さ360メートル、全長881.5メートルを誇り、主橋には長大吊橋の構造が採用されている。
六沖河大橋(Liu Chong He Bridge)
世界で13番目に高い橋として知られる六沖河大橋は、貴州省織金県に位置する斜張橋で、六沖河峡谷を跨いでいる。2013年に開通し、高さは340メートル、主径間は438メートルを超える。全長は3.2キロメートルに達し、周辺には建物や道路がほとんど存在しないため、峡谷の壮麗な自然景観を存分に楽しむことができる。
馬嶺河大橋(Ma Ling He Bridge)
世界の橋梁高さランキングで第16位を誇る馬嶺河大橋は、興義市に位置し、国家4A級観光地である馬嶺河大峡谷に架かっている。高さは329メートル、主径間は410メートルで、世界最大のアーチ橋であると同時に、人類史上初の道路・鉄道併用橋としても注目を集めている。
馬嶺河は谷が深く流れが速いことで知られ、峡谷の両岸はまるで織物のタペストリーのように変化に富み、無数の銀瀑が幾筋も流れ落ちる。急峻な地形と石灰岩の断崖が織りなす独特の景観は、まさに自然の壮麗な芸術作品といえる。
貴州省の代表的な橋梁
貴州には、世界的にも注目を集める数多くの橋が存在する。その代表例を以下に挙げる。
赫章大橋
世界最高峰の梁式橋と称される赫章大橋は、2010年6月に建設が始まり、2013年6月に開通した。畢節から威寧へ至る高速道路上に架かり、プレストレストコンクリートによる連続箱桁橋である。全長1073.5メートル、幅21.5メートル、11号橋脚の高さは195メートルに達し、中国国内のみならずアジア全体でも同形式橋梁の最高記録を誇る。
平塘大橋
「世界で最も高いコンクリート橋」と称される平塘大橋は、平塘県牙舟鎮と通州鎮の間に架かり、平塘から羅甸へ至る高速道路の要衝をなす。2016年4月29日に着工し、2019年に完成した。高さは315メートル(世界第20位)、幅30.2メートル、全長2135メートルに及ぶ。主橋は2径間×550メートルの三塔二主索を組み合わせた斜張橋で、主塔はダイヤモンド型の空間構造を採用。特に16号主塔は高さ328メートル(基礎を含め336メートル)に達し、アジア随一、世界でも同形式最大規模のコンクリート橋塔として知られる。施工の難易度は極めて高く、完成後は貴州を象徴するランドマークとなった。
大小井大橋
平塘~羅甸高速道路上に架かる大小井大橋は、世界の山岳地帯において最大径間を誇る鋼管アーチ橋である。2016年4月に着工し、全長約1.5キロメートル、主橋は450メートルに及ぶ。プイ族居住地の大井景勝区に位置し、峡谷を跨ぐ姿はまるで天空にかかる虹のようである。
赤水河大橋
江津~習水~古蔺高速道路上に建設された赤水河大橋は、山岳地帯における世界第2位のスパンを誇る吊橋である。2015年5月に着工し、全長2009メートル、主径間は1200メートルに達する。鉄筋コンクリート製の門型フレームを採用し、貴州側の橋塔は高さ243.5メートルで、同種橋梁としては世界最高を記録している。
芙蓉江大橋
2015年12月に開通した芙蓉江大橋は、道真~甕安高速道路に位置し、正安県に所在する。国内初の停泊式斜塔斜張橋として建設され、美しい景観と調和する姿で知られる。全長340メートル、主径間170メートルの独塔単径間プレストレストコンクリート斜張橋で、逆Y字型の主塔(高さ98.5メートル)が特徴的である。塔基部は二脚に分かれ、基盤コンクリート上で18メートル離れて立ち上がり、約55メートルの高さで交差して一体となり、塔頂まで伸びる構造を持つ。
「世界の道路と橋といえば中国、中国の道路と橋といえば貴州」と称されるほど、貴州は橋梁建設の宝庫である。壮麗な自然と調和する数々の橋は、単なる交通インフラを超え、貴州の風景を彩る象徴的存在となっている。