翻訳:呉 彩彩
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
山岳地帯に囲まれた貴州
貴州省は中国西南部の内陸に位置し、全省の94%以上が山地や丘陵で占められています。百平方キロメートルを超える平原は一つも存在せず、「外に出れば山が見える」と言われるほど、全土が山に囲まれています。省都・貴陽市は丘陵地帯の中に築かれていますが、実はここが省内で最も平坦な地域です。山々の間には数百メートルから千メートルを超える深い谷が縦横に走り、自然環境の険しさは想像を絶するものがあります。こうした地理的特徴から、貴州は全国で唯一「平原のない省」として知られています。
岩菩薩に祈る道中安全
古くから貴州の人々は、険しい道のそばに仏像を刻み「岩菩薩」と呼んで信仰してきました。旅立つ前に岩菩薩へ礼拝し、道中の無事を祈るのが習わしです。というのも、かつての貴州の道は断崖絶壁に沿う細い山道ばかりで、外出した人が無事に帰れるかどうかはまさに運次第でした。徒歩以外の移動手段はなく、命がけで曲がりくねった山道を進むしかなかったため、人々は神仏の加護を切実に求めざるを得なかったのです。
貴州最初の近代道路――貴陽環状道路
貴州省で最も早く建設された近代的な道路は「貴陽環状道路」です。これは民国時代、軍閥・桐梓派の周西成が貴州を統治していた時期に整備されました。
1926年6月、就任からわずか6日後に周西成は市政公所を「貴州省政府路政局」に改編し、貴陽中学や師範学校の教師・生徒、市民、さらに1000名の兵士を動員して道路建設を開始しました。周西成は紫林庵で開かれた建設動員大会で自ら演説し、アメリカ人技師・トッドを顧問に招聘。頭橋での着工式では自らテープカットを行い工事をスタートさせました。
二か月に及ぶ厳しい労働の末、延長約3キロメートル、幅10メートル(うち車道幅8メートル)の砂利道が完成し、「貴陽環状道路」と名付けられました。この道路は現在の環東路・環西路・環南路・環北路にほぼ相当し、貴州省における最初の近代道路として位置付けられています。
貴州省で最初に建設された省際道路が、黔桂道路(「黔」は貴州、「桂」は広西の別称)です。この道路は二期に分けて建設されました。第一期は「甘粑哨」から「独山」区間で、延長109キロメートル。1932年に着工し、1933年10月に完成しました。第二期は「独山」から「六寨」区間で、延長71キロメートル、1934年1月に竣工しました。貴州省内の全長は188キロメートルに及び、路床幅は9メートル、路面幅は8メートル、砂利の厚さは10〜12センチメートル、最小曲線半径は9メートルでした。橋梁は45基を数え、いずれも石造アーチ橋で、10トン積載の車両に対応可能でした。すべて石積みで築かれたこの道路こそが、貴州省における最初の省際道路でした。
かつて「希望がない」とまで言われた貴州省ですが、この10年間で想像を超える変貌を遂げました。2015年末までに省内80を超える県が高速道路で結ばれ、2020年までには9つの地級市すべてに高速鉄道が開通しました。また、大部分の県に一般鉄道が敷設され、10以上の支線空港が新設されました。さらに2017年には水運が整備され、海から遡行した船舶が、川面の標高が約1000メートルに達する烏江上流にまで到達できるようになりました。加えて、中国とミャンマーを結ぶ石油パイプラインや中央アジアからの天然ガスパイプラインも敷設され、道路や鉄道とともに険しい山岳地帯を横断しています。
貴州省の高速道路網も飛躍的に拡充しました。初期には全省でわずか1950キロメートルの延長に過ぎませんでしたが、2019年末には20万キロメートルを突破しました。2001年、「凱里」から「麻江」までの区間に省内初の高速道路が開通し、2015年には西部地区でいち早く県と県を結ぶ高速道路網を実現しました。2018年には12件の高速道路建設事業が同時進行し、延長は617キロメートル、全省の高速道路総延長は6450キロメートルに達しました。2009年に延長1000キロメートルを突破して以降、わずか10年で7000キロメートルを超えるまでに発展し、その規模は全国第4位、西部地区第2位に躍進しました。さらに、高速道路の密度においては全国首位の地位を維持しています。
「貴州省6横7縦8連4環状線高速道路計画網」とは、貴州省における高速道路網の整備計画を指します。その骨子は、2022年までに「6横7縦8連」と4つの都市環状線を完成させるというものです。
6横:東西方向に敷設される6本の高速道路を指し、
「徳江—習水」、「大興—威寧」、「江口—都格」、「鮎魚鋪—勝境関」、「水口—江底」、「余慶—安龍」の各路線が含まれます。
7縦:南北方向に伸びる7本の高速道路で、
「松桃—従江」、「川沿—榕江」、「道真—新寨」、「崇渓川—羅甸」、「赤水—望謨」、「生機—興義」、「威寧—板堤」が該当します。
8連:主要路線を相互に結ぶ8本の連絡線で、
「宥和陽—遵義」、「貴州西—大方県」、「扎佐—修文」、「天柱—黄平」、「都匀—織金県」、「恵水—安順」、「大山—六盤水」、「榕江—麻尾」が計画されています。
4環状線:主要都市を囲む4本の環状高速道路で、
貴陽、遵義、六盤水、安順の各市に整備されます。
計画の理念は、「中心への集中」「多段的な輻射」「相互接続」「広域カバー」「十分な輸送能力」「円滑な連携」という6つの特徴に要約されます。これにより、省内の経済圏の中核都市と周辺のノード都市間を基本的に「1時間圏」で結び、貴陽を中心とした「3時間交通圏」、各市州行政センターを核とした「2時間交通圏」を形成します。さらに、省内9つの市州行政センターにはそれぞれ都市環状線が整備される計画です。
加えて、高速道路網は省内すべての「国家A級以上観光地」および大部分の村落や町へもアクセス可能とし、国家道路網の要衝、鉄道ハブ、空港など主要交通拠点や産業基地と密接に連携します。経済圏間を結ぶ都市間高速道路は8車線規模に達し、広域的な移動を支えます。
このように、貴州省における高速道路建設は加速度的に進展しており、それに伴い地域経済の発展も着実に推進されています。