新着情報

貴州の鉄道と高速鉄道

2020-05-21

翻訳:羅 芳

修正:須崎 孝子

監修:姚 武強

補筆・再構成:大橋 直人



貴州の鉄道


1939年、貴州省で最初の鉄道が建設された。1944年時点では、泗亭から都匀までのわずか150キロメートルに満たない鉄道しか存在せず、その後も国民党軍によって破壊されるという厳しい歴史を歩んだ。


1590070739.jpg


1958年10月15日、解放後の貴州省で黔桂鉄道の修復工事が始まり、貴陽までの開通を果たした。これにより「鉄道のない省」という歴史に終止符が打たれた。


翌1959年2月1日には、貴陽駅において貴州桂鉄道の開通式典が盛大に挙行された。これは新中国成立後、貴州省で初めて開通した鉄道路線である。


一方、川黔鉄道は19564月に着工し、同年10月に運行を開始した。小南海から出発し、綦江鉄道に接続して綦江へと至り、さらに南下して貴州に入り、桐梓・遵義・息烽・修文を経由して貴陽に至る全長423.6キロメートルの路線である。



1590070355.jpg


197210月、湘黔鉄道が全線開通した。湘黔鉄道の建設は1936年、国民政府がドイツから借款を受け入れ測量を開始したことに端を発する。しかし、日中戦争の勃発により中断された。建国後も1958年から1960年にかけて二度の工事中断を余儀なくされたが、19709月に工事が再開され、197210月にようやく全線開業に至った。計画開始から通算37年を要した壮大な事業であった。


1590071566.jpg


 

199012月には南昆鉄道の建設が始まり、19973月に全線が開通、同年12月に正式に営業運転を開始した。



1590070086.jpg


201412月、西南地区と珠江デルタを初めて直結する高速鉄道路線――貴広高速鉄道が開業し、貴陽は再び西部鉄道建設の中心的存在となった。


1590069609.jpg


また、1997121日に着工し、20011216日に開通した路線は、北は六盤水市から南は盤県柏果鎮に至る重要な鉄道路線である。


1590070508.jpg


1998626日には内昆鉄道の建設が全線で着工され、20019月に完成した。全長872キロメートルに及ぶこの路線は、20世紀末に西南地区で建設されたもう一つの重要な幹線である。


1590069949.jpg


200177日、渝懐電化鉄道の銅仁区間において工事が本格的に始まり、2005年に竣工した。同路線は西は重慶市魚嘴駅から出発し、貴州省銅仁地区を経て湖南省懐化に至る。重慶区間は全長96キロメートルに及ぶ。


1590069215.jpg

 

貴州の高速鉄道


20081013日に着工した貴広高速鉄道は、貴州省初の高速鉄道路線である。総投資額は900億元余りにのぼり、20141220に全線が開通した。これにより、貴陽から広州までの所要時間は約4時間となった。



1590067680.jpg


20161228日には、沪昆高速鉄道の貴昆区間が正式に開通し、沪昆高速鉄道が全線で運行を開始した。これにより、貴陽から昆明までの移動時間は約2時間に短縮された。


1590067485.jpg


2018125日には、重慶鉄道が正式に開業し、貴陽から重慶までが約2時間、貴陽から遵義までは従来より40分短縮された。これにより、貴州省内で建設された貴陽広州、貴陽昆明、貴陽長沙、貴陽重慶を結ぶ高速鉄道網が整い、貴陽を中心とした新しい「十字型」の高速鉄道ネットワークが形成された。


1590067804.jpg


20191216日には、全長約632.6キロメートルの成貴高速鉄道が開通した。設計速度は時速250キロメートルで、和諧号動車組が運行されている。これにより、貴陽成都間の所要時間は従来の18時間からおよそ3時間半へと大幅に短縮された。


1590067649.jpg


201512月に着工した貴南高速鉄道は2021年の開通を予定しており、開業後は貴陽南寧間を約2時間で結ぶ。北は貴陽市、南は広西チワン族自治区の南寧市まで、全長533キロメートル、正線延長は約487キロメートルで、設計速度は時速350キロメートルである。


1590067509.jpg


2020年までに、貴州省の鉄道営業距離は4,000キロメートルを超え、そのうち高速鉄道は1,500キロメートルを上回った。「第13次五か年計画」期間中には1,200億元の鉄道建設投資が実施され、計画の完了により、貴陽と周辺省都および全国の主要経済圏を結ぶ27時間圏の高速鉄道ネットワークが形成された。また、貴陽と各市(州)の中心都市を高速鉄道で結び、0.52時間圏を実現。さらに2030年までには、省内の隣接市(州)間の鉄道接続が整い、全省的な鉄道網の完成が見込まれている。


1590067911.jpg


貴州省は典型的なカルスト地形で、中部を中心に北・東・南の三方へ傾斜しており、「八山一水一分田(山が多く、耕地や水資源が乏しいことを表す)」と形容されるように、中国で唯一平原を持たない省である。このため高速鉄道の建設には数々の技術的難関を克服し、膨大な人力と資材が投入された。旧式で速度の遅い「緑皮車両」から高速鉄道時代へ、そして鉄道網の形成へと至る過程は、まさに「無から有へ、遅から速へ、一本の線から広大な網へ」という発展の歴史そのものである。


1590067835.jpg


貴州省における高速鉄道時代の到来


近年、国家の貧困扶助政策と観光業の発展を背景に、さらに「一帯一路」戦略の推進を受けて、貴州省では交通需要が急速に拡大した。その結果、高速鉄道網の整備が進み、同省はついに「高速鉄道時代」へと突入したのである。現在、貴陽は全国十大高速鉄道中枢都市の一つに数えられるまでになった。


1590068568.jpg


2時間で重慶、3時間で成都や長沙、4時間で武漢や広州へ――。貴南高鉄や貴高高鉄の建設・計画が進むにつれ、貴陽の交通拠点としての優位性は一層拡大している。「一帯一路」構想のもと、貴陽は西南・華南・東南地域を結ぶ要地として、中国九大高速鉄道の中核拠点へと成長しつつある。さらにその地位は、中国国内にとどまらず、南アジアや東南アジアとを結ぶ「汎アジア交通の要衝」へと広がっている。


1590070005.jpg


現在、貴陽市には貴陽駅・貴陽北駅・貴陽東駅・貴陽南駅の四つの特等駅(旅客数が極めて多い最高等級の駅)が設けられている。このうち貴陽南駅は西南地域最大の鉄道ハブ駅であり、また貴陽北駅は中国における19の主要鉄道中枢の一つである。北駅は湖南・広西・雲南・四川・重慶と接続し、貴州省高速鉄道網の「心臓」として機能している。


1590069745.jpg


高速鉄道の開通は地方経済を強力に牽引している。漢方薬や生態農産物、鉱産資源といった貴州特産品の販路拡大を後押しし、またビッグデータ産業の発展に伴い優秀な人材を呼び込み、長江デルタや珠江デルタへの労働力供給も円滑化している。さらに、高速鉄道の利便性は企業誘致を促進し、地域社会の発展と民生向上を支えている。


まさに「高速鉄道の時代」は大流通の時代であり、人・モノ・資金の往来を加速させると同時に、大規模な協力の時代を切り開き、人々の生産・生活様式を大きく変革している。


1590072851.jpg


2019年12月5日からは、貴陽市内で電子乗車券の導入が始まった。これは鉄道部門が情報化・知能化技術を活用し、サービスの質を高めて旅客体験を改善する取り組みの一環である。貴陽北・貴陽東・龍洞堡・龍里北・貴定県・都均東・三都県・榕江・従江の9駅において試行が開始され、D列車やG列車の利用者は、身分証や居住証を用いて顔認証ゲートを通過するだけで乗降可能となった。紙の切符は発行されず、完全にデジタル化されたのである。


また、成都局グループ会社の管轄では、西成・成貴・貴広など33駅に加え、1210日以降は上海昆線・重慶貴線などの24駅でも電子乗車券が導入され、利便性が飛躍的に高まった。


1590073364.jpg


201411日に施行された「鉄道安全管理条例」では、高速鉄道とは「設計速度250km/h以上(予測を含む)で、初期運行速度が200km/h以上の旅客専用鉄道」と定義されている。時速250km/h以下(160km/h程度まで)は「高速鉄道」、160km/h以下は「快速」あるいは「普通列車」とされ、速度に応じて三段階に区分されている。


1590073123.jpg


中国の改革開放と近代化建設を主導した鄧小平は「豊かになるには、まず道をつくる」と語った。改革開放から40年――歴史の長い流れの中では「弾指一瞬」にすぎない。しかしこの短期間に、中国の鉄道は蒸気機関車から内燃機関車、さらには電気機関車へと飛躍的な進歩を遂げた。速度は時速40kmの鈍行から350kmの高速鉄道へ、車両も旧式の緑皮車から、温度調整や座席可変機能を備えた最新鋭の「復興号」へと進化した。


かつては悠長に時間をかけていた旅も、いまや「朝発って夕方に着く」時代となった。列車の進化のたびに縮まるのは時間的距離であり、加速するのは人々の歩みである。その軌跡は、まさに中国社会と経済の発展を映し出すものである。