翻訳:鄧 仕焦
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
百里杜鵑風景名勝区は、貴州省西北部・烏蒙山の腹地に位置し、畢節市大方県と黔西県の境界に広がる自然景勝地であり、畢節市百里杜鵑管理区に属します。その名は、幅1~3kmに及ぶ天然の原始ツツジ林が50km以上連続していることに由来します。
園内には、世界に分布するシャクナゲ属の主要な五大類型がすべて揃っており、まさに「シャクナゲの王国」と称されます。毎年3月中旬から4月末にかけて高山シャクナゲが次々に開花し、百里にわたる山々が一斉に花に染まります。その景観は絢爛豪華で、まるで錦織の山脈が連なるかのようです。その圧倒的な美しさから「世界最大の天然花園」と称されています。
百里杜鵑風景名勝区は、国家5A級観光地、国家生態観光示範区であると同時に、世界で唯一の「シャクナゲ国家森林公園」としても知られています。さらに国家自然保護区に指定されており、「全国低炭素観光実験区」「アジア・大中華区十大自然原生態観光地」にも選ばれています。そのため、春の花見、夏の避暑、秋のレジャー、冬の雪景色と、一年を通じて多彩なエコツーリズムを楽しめる場として高く評価されています。
同地は温暖帯湿潤季節風気候に属し、冬は厳しい寒さがなく、夏も酷暑に見舞われません。年平均気温は11.8℃、年間降水量は約1150mmで、快適な気候条件が保たれています。空気中には1立方メートルあたり平均6万9千個以上のマイナスイオンが含まれ、自然の酸素浴場としての環境が整っており、まさに「養生・避暑の天国」と称するにふさわしい地です。
百里杜鵑の植生と学術的価値
百里杜鵑は、世界的にも類例の少ないほど多様なシャクナゲ属植物の生育地として知られています。ここには、以下をはじめとする60種以上のシャクナゲが自生しています。
⚫︎馬纓杜鵑(Rhododendron delavayi Franch.)
⚫︎樹型杜鵑(Rhododendron arboreum Smith)
⚫︎狭葉馬纓杜鵑(Rhododendron delavayi Franch. var. peramoenum)
⚫︎美容杜鵑(Rhododendron calophytum Franch.)
⚫︎大白杜鵑(Rhododendron decorum Franch.)
⚫︎露珠杜鵑(Rhododendron irroratum Franch.)
⚫︎団花杜鵑(Rhododendron anthosphaerum)
⚫︎迷人杜鵑(Rhododendron agastum Balf. f. et W. W. Smith)
⚫︎銀葉杜鵑(Rhododendron argyrophyllum Franch. subsp. argyrophyllum)
⚫︎皺皮杜鵑(Rhododendron wiltoii)
⚫︎錆葉杜鵑(Rhododendron siderophyllum Franch.)
⚫︎問客杜鵑(Rhododendron ambiguum Hemsl.)
⚫︎腺萼馬銀花(Rhododendron bachii H. Lév.)
⚫︎多花杜鵑(Rhododendron cavaleriei Levl.)
⚫︎映山紅(Rhododendron simsii Planch.)
⚫︎錦繍杜鵑(Rhododendron pulchrum Sweet)
⚫︎貴定杜鵑(Rhododendron fuchsiifolium Levl.)
⚫︎暗緑杜鵑(Rhododendron atrovirens Franch.)
⚫︎その他、映山紅の変種、落葉性杜鵑、水紅杜鵑(Rhododendron pulchurum ‘DanBanShuiHong’)、百合杜鵑(Rhododendron liliflorum Levl.)、多頭杜鵑 など。
特筆すべきは、シャクナゲ属5大亜属すべてが揃っている点であり、世界的にも希少な植生環境とされています。花色は鮮紅・桃紅・紫・黄金・淡黄・白・淡緑など多岐にわたり、極めて多彩です。中でも最も珍しい現象は、一本の樹木に異なる花色を同時に咲かせる個体であり、多い場合には一株に7色の花が咲き分けることもあります。
このように、百里杜鵑は「世界最大の天然花園」と称されるにふさわしい存在であり、その植生はまさに世界的な自然遺産・国宝級の価値を有しています。
百里杜鵑風景名勝区
百里杜鵑風景名勝区は「シャクナゲの海」「シャクナゲの世界」と称されるのみならず、古木が群生し、山水・森林・洞窟が織りなす自然景観と、希少な鳥獣類が息づく原始林を併せもつ観光地である。園内には鳥類104種、獣類31種が確認されており、その中には国家一級保護動物であるウンピョウ(雲豹)やカモシカの一種である林麝、また二級保護動物であるセンザンコウ(穿山甲)、ベンガルヤマネコ(豹猫)、コビトジャコウネコ(小霊猫)、キンケイ類の紅腹錦鶏・白腹錦鶏・白冠長尾キジなどが生息している。植物では、イチョウやオンコギが国家一級保護植物、クロモジ、コウボク、ヒノキが二級保護植物に指定されている。加えて、園内では131種もの菌類が記録されている。
古木や名木の存在も本区の特色であり、千年を超える巨桑、シャクナゲの王と称される杜鵑花王、皇帝より下賜された御賜銀杏、沙江の古棘楸などが知られている。百里杜鵑国家森林公園は典型的なカルスト地形に位置し、豊かな自然景観を形成している。例えば、普底の紅岩峰・白岩峰、金坡の五指峰に代表される奇峰群、垂直に切り立つ花底岩の絶壁景観、二羽の鳥が嘴を寄せ合うように対峙する「対嘴岩」と呼ばれる奇岩、さらには金坡や仁和の境界に見られる大規模な溶洞や燕の営巣する洞窟など、多様な地形景観が展開する。洞窟内を流れる米底河の伏流水は峡谷を抜けて轟音を立てるなど、水文景観も見どころとなっている。また、湖面が広く澄明な山湖は、静かで清らかな療養・休憩の場として理想的である。
景区内にはイ族・ミャオ族・プイ族などの少数民族が居住し、民族文化も豊かである。イ族の年、松明節、生花節、跳花節といった伝統祭礼は地域色を強く反映し、多くの観光客を魅了する。ミャオ族による蘆笙舞や打鼓拳舞は、原始的かつ神秘的な雰囲気を帯びた舞踊であり、民俗芸能の魅力を色濃く示す。さらに、刺繍・蝋染め・織布・漆器・民族衣装などの工芸は、少数民族文化の精華として高く評価されている。
食文化も豊かで、「水西料理」と総称される地域料理には、宮保肉、骟鶏豆花、黄粑などがあり、訪れる者に独自の味覚体験を提供する。周辺には歴史·文化資源も多く、大方県の国家級文物保護単位である奢香夫人の墓や奢香博物館、さらに黒頸鶴の越冬地として知られる威寧草海国家級自然保護区、そして「天下第一洞」と称される織金洞国家級風景名勝区を訪れることも可能である。
アクセス
百里杜鵑風景名勝区は、貴陽から約155km、遵義から100km、畢節市区から80km、黔西県城から30km、大方県城から40km余りの位置にある。園内へのアクセスは4つの幹線道路によって確保されている。第一は黔西県城(野壩)から金坡花区を経て普底(黄坪花区)に至る全長27.7kmの二級道路、第二は大方県城から国道326号を経て普底花区に至る42kmの道路、第三は貴畢高速道路林泉出口から紅林郷を経由し普底へ至る28kmのルート、第四は杭瑞高速百里杜鵑出口から花海大道を経由して普底景勝地に至る道路である。