銅仁市

武陵源

2018-06-03

武陵源(ぶりょうげん)は、中国湖南省北西部、武陵山脈の一角に広がる景勝地であり、1992年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。その景観は、大自然の長大な侵食作用によって形成された独特の砂岩峰林地形(quartz sandstone peak forest landform)を特徴とし、数千に及ぶ石柱群や断崖、峡谷が林立する様は、しばしば「仙境」にたとえられます。


この地域は「張家界国家森林公園」「天子山自然保護区」「索渓峪自然保護区」の三大景勝地から構成され、総面積は約26,000ヘクタールに及びます。武陵源の奇岩奇峰は、石英砂岩層が長年の風化や流水浸食を受けた結果、垂直に切り立った石柱や塔状地形を形成したものであり、同様の地形は世界的にも稀少です。


その景観美は中国の伝統的山水画を彷彿とさせ、「桂林の水景」「黄山の奇峰」の魅力を併せ持つと称されてきました。現代においても、映画や映像作品の舞台イメージの原型となり、世界的に知られるようになっています。


また、武陵源一帯は多様な生態系を有しており、国の重点保護種である中国大サンショウウオやミヤマテングシデなどの希少動植物が生息していることでも注目されています。そのため、観光地であると同時に、生態保全・地質学・景観学の研究対象としても極めて重要な地域です。



補筆・再構成:大橋 直人