九龍洞(きゅうりゅうどう)は、貴州省銅仁市の東方約17km、漾頭鎮に広がる六龍山脈北麓、錦江南岸の峡谷地帯に位置しています。総面積は約1,058㎢におよび、その中心部5㎢の範囲に九龍洞をはじめ、錦江峡谷や錦江ダム湖などの景勝地が集中しています。また、この地域には新石器時代の遺跡も確認されており、自然景観とともに考古学的価値も有しています。
九龍洞は景勝区のなかでも最も壮観なスポットとして知られています。洞内には巨大な「大広間」があり、その規模は長さ約2,284m、幅約100m、高さ75〜80m、面積約7万㎡に達します。内部には石筍・石柱・石幔など典型的な石灰岩の鍾乳洞地形が発達し、カルスト地形研究の重要な対象ともなっています。
この洞窟景観は、貴州高原に広く分布する石灰岩層の長期的な溶食作用によって形成されたもので、中国南方の典型的なカルスト地貌の一例と位置づけられます。自然美と地質学的価値に加え、周辺の先史遺跡との複合的な文化景観を備えている点でも学術的意義が高いといえます。
補筆・再構成:大橋 直人