銅仁市

東山

2018-06-03

東山は、かつて多くの仏教寺院が建立されていた歴史を持つ名所で、現在もその代表として東山寺が現存しています。東山寺の境内には「東山寺儺文化博物館」が併設されており、この地域に伝わる民俗文化、とりわけ儺(な)文化に関する資料や展示が行われています。


儺文化とは、古代中国において悪霊を追い払い、災厄を防ぐために行われた民間信仰・祭祀行事に由来し、後に民俗芸能として発展したものです。その具体的な表現の一つが儺戯(なぎ)と呼ばれる仮面劇であり、仮面を着けた演者が神仏や鬼を演じ、歌舞や儀礼的な所作を通して人々の安寧を祈るものです。儺戯は儺祭と密接に結びつき、中国南方の多くの地域で独自の発展を遂げましたが、特に貴州省においては地域社会の生活や信仰と深く結びついた独自の形態を残しています。


東山寺では、このような儺戯の上演を実際に鑑賞することができ、単なる宗教施設としてだけでなく、地域固有の民俗芸能を伝承・発信する重要な拠点となっています。こうした点で東山は、宗教史・民俗学・演劇研究においても価値の高い文化資源といえます。



補筆・再構成:大橋 直人