黔東南州

増沖鼓楼

2018-06-04

増沖鼓楼は、従江県城から北西へ約83km離れた増沖村にあり、清代の1672年に建立されました。1981年には省級の重点文物保護単位に、さらに1988年には国家級の重要文化財に指定されています。建物は敷地面積115㎡、高さ26mをほこり、八角形の平面に基づいて構築され、内部を空洞とした十三層の屋根を持つ壮大な構造を呈しています。


鼓楼という特異な建築形態は、トン族の氏族社会の結束を強化する過程で、幾度もの変遷を経て形成されたものと考えられています。かつては緊急時に村人を招集するための機能を担っていましたが、現在では住民の集会所や共同体の多目的空間として広く活用されています。具体的には、広場や舞台を兼ねたイベント施設、コミュニティセンターとしての役割を果たすほか、議論や意思決定、権力の行使など、集落社会の中核的な場として機能しています。


このように、増沖鼓楼は単なる建築物を超え、社会的・文化的実践の中心としてトン族共同体の歴史とアイデンティティを体現する象徴的存在といえるでしょう。



補筆・再構成:大橋 直人