翻訳:劉 繍
修正:小川 恵佳
監修:姚 武強
貴州省の略称は「貴州」あるいは「貴」であり、中国南西部の東南域に位置する。地理座標は東経103°36′~109°35′、北緯24°37′~29°13′にまたがり、東は湖南省、南は広西チワン族自治区、西は雲南省、北は四川省および重慶市と接する。山水に恵まれ、気候は温和で、多民族が共生し、資源が豊富であるとともに、発展潜在力の大きい省である。東西の距離は約595キロメートル、南北は約509キロメートルに及び、総面積は17万6,997平方キロメートルで、中国全土の1.8%を占め、国土面積順位では第16位に位置する。
地理環境には顕著な特色がある。貴州省は雲貴高原に属し、地勢は西部が高く東部が低い。中央部を頂点として北・東・南の三方向に傾斜し、平均標高はおよそ1,100メートルである。省域の大部分は高原性山地で占められ、「八山一水一分田」と形容される。地形は大きく高原・山地・丘陵・盆地の四類型に区分され、このうち山地と丘陵が全体の92.5%を占める。
省内には山脈が縦横に走り、峰々が重なり合い、峡谷が深く刻まれている。北部には大婁山脈が西から東北へと斜めに延び、要衝である婁山関の標高は1,444メートルに達する。中南部には苗嶺山脈が横たわり、主峰・雷公山は標高2,178メートルである。東北部には武陵山脈が湖南から続き、主峰の梵浄山は標高2,572メートルを誇る。西部には烏蒙山脈が聳え、その一支脈に属する赫章県珠市郷のニラ坪は標高2,906メートルに達し、省内最高峰として「貴州の屋根」と称される。対照的に、東南部の黎平県土地坪郷・水口河の標高は147.8メートルで、省内の最低地点である。
また、貴州は典型的なカルスト地形の発達地域である。カルスト地形の分布面積は11万2,472平方キロメートルに及び、国土全体の63.8%を占める。形態・タイプが多様で、地域差も顕著であり、特殊かつ独自のカルスト生態系を形成している。
土壌と気候
貴州省の土壌は種類が多様である。省内の土壌分布面積は15万9,100平方キロメートルに及び、国土面積の約90.4%を占める。全体として中亜熱帯常緑広葉樹林帯に属し、主に紅壌および黄壌が卓越する。中部から東部にかけては湿潤性の常緑広葉樹林帯が広がり、黄壌を主体とする。一方、南西部は乾性常緑広葉樹林帯に属し、紅壌の分布が顕著である。さらに、西北部では北亜熱帯的要素を含む常緑広葉樹林帯が展開し、ここでも黄壌の分布が多い。
また、母岩条件の制約を受けて多様な土壌型が形成されており、石灰土、紫色土、粗骨土、棕壌、湿性土、泥炭土、沼沢土、石炭土、石質土、山地重壌、赤壌、新積土などが確認される。しかしながら、農業生産の観点からみると、耕作に適した土壌資源は相対的に不足している。農業・林業・牧畜業に利用可能な土壌は全省面積の約83.7%にとどまる。
気候は概して温暖湿潤で快適であり、亜熱帯湿潤季節風気候に属する。年間を通じて気温変化は小さく、冬季は比較的温暖で夏季は涼しく、気候的に過ごしやすい。多くの地域で年平均気温は約15℃である。最も寒冷な1月の平均気温は3~6℃で、同緯度の他地域に比して高めであるのに対し、最も暑い7月の平均気温は22~25℃にとどまり、典型的な「夏涼地域」を形成している。
年間平均降水量はおおむね1,200ミリ前後で、雨季の降水量が多い。曇天の日数は年間150日を超えることが一般的であり、相対湿度は常に70%以上を保つ。こうした気候条件は大気循環や地形の影響を強く受けており、「山には四季があり、十里ごとに気候が異なる」と形容されるほど多様性に富む。一方で、気候の変動性も大きく、干ばつ、寒波、霜害、雹害などの気象災害が比較的高頻度で発生し、農業生産に一定の影響を及ぼしている。
植生
貴州省の植生は極めて豊かで多様性に富み、全体として明瞭な亜熱帯的特徴を有する。その構成は種数が多く、区系要素も複雑である。維管束植物(コケ植物を除く)は、252科1,781属8,612分類群(種・亜種・変種・変型を含む)に及ぶ。植生区系の構成要素としては、亜熱帯および熱帯性の地理的成分が優勢であり、とりわけ汎熱帯分布要素、熱帯アジア分布要素、旧世界熱帯分布要素が大きな比重を占める。一方で、温帯性の成分も一定程度存在し、さらに中国固有種や貴州特有種も少なくない。
特殊な地理的位置条件により、省内の植生タイプはきわめて多様である。代表的なものとして、中亜熱帯帯性の常緑広葉樹林、カルスト地域特有の常緑落葉広葉樹混交林、南部地域にわずかに残存する谷地性季節雨林、亜高山性の寒温帯針葉林、さらに暖温性の山地針葉林などが挙げられる。加えて、二次林として大規模な常緑落葉広葉樹林や落葉広葉樹林が分布し、灌木林も広範に発達している。
植生の空間的分布は顕著な過渡性を示しており、多様な植生タイプが地理的分布において相互に交差・重複している。その結果、省内の植生は極めて複雑かつ多様な景観を形成している。
河川
貴州省には河川が極めて多く、同省は長江水系と珠江水系の上流が交錯する地域に位置し、両大水系上流における重要な生態的障壁を形成している。省内の水系は地勢に従い、西部および中部から北・東・南の三方向へと分流する。苗嶺山脈は長江流域と珠江流域の分水嶺をなし、その北側は長江流域に属し、流域面積は117,470平方キロメートルに及び、全省国土面積の65.7%を占める。主要な河川としては、烏江、赤水河、清水江、洪州河、舞陽河、錦江、牛柵江、横江などが挙げられる。一方、苗嶺山脈の南側は珠江流域に属し、その流域面積は60,420平方キロメートルで、全省の34.3%を占める。主な河川には、南盤江、北盤江、紅水河、都柳江などがある。
貴州省の河川は総数が多く、流域面積50平方キロメートル以上の河川は1,059本を数える。その多くは山岳地帯性の特徴を有し、上流域では河谷が比較的開けており、水流は緩やかで水量も少ない。中流域では峡谷が交互に現れ、水流は急峻である。下流域に至ると河谷は深く狭くなり、水量が増大し、水力資源に恵まれている。
また、特異な地理的位置と複雑な地形条件により、貴州省の気候と生態環境は多様性に富む。このため立体的な農業経営が発達しやすく、農業生産において強い地域性・区域性が見られる。これにより、省全体の総合的な農業開発や特色ある農業の発展に適した条件が形成されている。