翻訳:羅 凱
修正:須崎 孝子
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
平壩桜園は、貴州省貴安新区高峰鎮の北部、紅楓湖畔に位置しています。この地は「高原の真珠」と称えられる景勝地であり、平壩農場内において現在1万ムー余りの土地に約70万株の桜が植栽されています。これらはいずれも希少で高価な品種であり、その規模は中国最大の桜の名所として広く知られています。
CCTVをはじめとする国内主要メディアでも繰り返し取り上げられ、「貴州随一の桜観賞地」あるいは「中国の桜の海」と称賛されています。さらに、ここは世界最大規模の桜栽培基地とも連なり、「桜の王国」としての名声を得ています。
また、沪昆線の貴陽—安順間を結ぶ鉄道路線は、桜の花海を縫うように走り抜けるため、開花期には沿線一帯が桜色に染まり、両側を囲む桜並木が「中国で最も美しい高速道路」とも呼ばれる壮観を生み出します。
2018年3月、BBCが万ムーの桜を空撮し、その映像を公開すると、圧倒的な美景は瞬く間に世界を魅了しました。写真は各国の人気ウェブサイトで拡散され、海外メディアからは「地球上で最も驚嘆すべき景観の一つ」と称賛されています。
この地の桜の見頃は毎年3月初旬から4月初旬までの約1か月間であり、その短い花期を目当てに、毎年100万人以上の観光客が各地から訪れます。桜は次々と開花し、錦繍のごとく山肌を彩り、峰々を覆い尽くし、途切れることなく続く光景は、まるで一本のピンク色のリボンが紅楓湖を取り巻くかのようです。その壮大な景観は天地をも覆い隠すかのようで、圧倒的な迫力に満ちています。
紅楓湖の湖面には大小の島々が浮かび、桜がその風景をさらに引き立てています。遊歩道を歩けば、まるでロマンチックな絵巻物の中を進むかのような気分を味わえるでしょう。数十万本の桜が一斉に咲き誇る頃には、「十里の桜」と称される絶景が広がり、その光景は仙境を思わせます。山々を覆う銀装と、一面に広がる薄紅の彩りが織りなす花の海は、見る者の心に強烈な印象と感動を刻み込みます。
貴安万ムー桜園
貴安万ムー桜園は、総面積約12,000ムーの敷地を計画的に整備した大規模桜園であり、桜を中心とした観賞型の景勝地として知られています。現在、園内にはおよそ70万本の桜が植栽されており、その品種は「中国紅」「大山桜」「迎春桜(オウバイザクラ)」「菊桜」など20種以上に及びます。これらは一重咲きや八重咲きの品種で構成され、花色も深紅・淡紅・純白の三色に分かれ、華やかで優美な景観を生み出しています。花期は「早咲き」と「遅咲き」に分けられ、とくに白花の桜は早咲き種に属し、10日ほどで散ってしまう一方、赤花の桜は続いて開花し、およそ2週間にわたり観賞を楽しむことができます。
早桜(Cerasus subhirtella (Miq.) Sok.)
「早桜」は日本で古くから栽培されてきた品種群であり、バラ科サクラ属に属する落葉高木です。樹高は3~10メートルに達し、樹皮は灰褐色、小枝は灰色で、若枝には緑色の柔毛が密生します。冬芽は卵形で、鱗片の先端にはまばらな毛を有します。葉は卵形から長楕円形を呈し、花序は散形花序(傘状花序)で、葉と同時に開花します。花期は3月から4月、花弁は淡紅色で倒卵形、6月には黒色の核果を結びます。観賞価値が極めて高いことから、日本のみならず北半球温帯域で広く栽培されています。
晩桜(サトザクラ類)
一方、「晩桜」と呼ばれる品種群はサトザクラを中心とする八重咲き系統に属し、日本における園芸史の中で特に発展してきました。落葉高木で、樹皮は銀灰色を呈し、横長の皮目をもちます。葉は卵形から長楕円形で、鋭い重鋸歯を有し、葉柄には腺点が認められます。花色は純白から淡黄色、濃紅に至るまで多彩で、葉も若葉時には黄緑・赤褐・紫紅など多様な色調を示します。花は一重咲きから半八重咲き、八重咲きと多様で、花序は散形花序を形成し、開花期は気候により顕著な差異があります。
サトザクラ類は園芸的改良が最も盛んに行われてきた系統で、日本の国花「桜」を象徴する存在でもあります。その観賞価値は極めて高く、世界各地の庭園や公園に広く導入されています。さらに、花蕾には「鎮咳・祛風」などの薬用的価値があると伝えられ、古くから民間療法にも用いられてきました。
平壩県の気候と桜園形成の経緯
平壩県は亜熱帯湿潤型季節風気候に属し、冬季は厳しい寒さがなく、夏季も酷暑に見舞われることはありません。四季の変化が明瞭で、年間を通して降水量が豊富である一方、砂塵が少なく、台風の影響を受けにくいという特性を有します。また、紫外線の放射強度が比較的低いため、年間を通じて温和な気候が保たれています。周囲には青山と清流が広がり、自然生態系が良好な状態で保存されており、美しい景観環境を形成しています。こうした気候・水資源・土壌条件は、桜の生育に極めて適しており、平壩農場は桜栽培に理想的な立地といえます。
当初、各都市に運ばれた桜の苗木はこの地において健やかに育ち、やがて林をなし、開花期には一面に鮮やかで華麗な桜の景観を呈するようになりました。
2002年3月1日、園林苗木の育成を専門とする「貴州緑和美建設投資有限公司」が平壩農場と正式に賃貸契約を締結し、5224ムーの土地を借り受けました。同社は当初、都市化の進展に伴う需要を見込み、貴州省内の都市緑化に供給する高品質な観賞用苗木の生産を目的として桜の栽培を開始しました。
しかし、桜の成長は予想をはるかに上回り、この地の良好な気候、水源、肥沃な土壌の恩恵を受けて、数十万本の苗木は急速に成林しました。その結果、今日では「万ムーの桜園」と呼ばれる大規模な桜の景勝地が形成され、地域を代表する観光資源へと発展しています。
平壩農場と桜園の形成
「心持は使うことができない、心なくして柳を挿せば木陰となる」という古句にあるように、思いがけない巡り合わせから新たな風景が生まれることがあります。本来は都市緑化の苗木供給を目的として桜を植えていた貴州緑和美公司の事業が、結果として現在の平壩農場を「桃源郷」に変え、貴安新区観光産業を象徴する美しい名刺となったのです。
園内には多様な桜品種が植栽されており、鑑賞価値の高い珍種も見られます。たとえば、花と葉が同時に展開し、花形が鈴を思わせる寒緋桜(学名 Prunus campanulata)、普賢菩薩が象に乗る姿にちなんで命名された普賢象桜、そして淡緑色の花を咲かせる稀少品種・御衣黄(学名 Prunus lannesiana cv. Gioiko)などが代表的です。これらの品種は中国国内では珍しく、観光的価値のみならず植物学的にも重要な意義を有しています。
立地と交通アクセス
平壩農場は総面積約2万4000ムーを占め、貴陽市と安順市の中間に位置しています。両都市からはいずれもおよそ50キロメートルの距離にあり、交通の便に恵まれています。農場の桜園は単に環境が美しいだけでなく、まるで絵画のような景観を呈し、春には花の海が広がる壮麗な聖地として知られています。
地理的には国家級新区である貴安新区の区域内にあり、国家重点風景名勝区に指定される紅楓湖の湖畔に隣接しています。貴陽市からは約40キロ、安順市からは約50キロの距離で、沪昆鉄道(貴昆線)、貴黄公路、清黄公路などが交差し、観光客にとってアクセスはきわめて容易です。
平壩農場とその自然・文化資源
平壩農場は貴州省最大の花卉苗木育成基地であり、木犀(モクセイ)、イロハモミジ、クスノキ、ヒマラヤスギ、ハクモクレン、バイラン(白蘭)など十数種類に及ぶ景観樹木が栽培されている。これらは観光客にとって四季折々の鑑賞資源となっている。とりわけ「万ムー桜園」は広大かつ平坦な地形を有し、風光は絵画のごとく優雅である。園区の設計は花卉園、ブドウ園、モクセイ園、梅園など多彩なテーマを組み込み、観賞・体験・レジャーを一体化させた総合的観光パークとして構想されており、一年を通じて異なる植物景観を楽しむことができる。
周辺には古木が林立し、園内には3~4人で抱えられるほどの樹齢100年を超えるクスノキが約280本残されている。全長約2キロに及ぶクスノキ並木は、陽光を遮る木陰のトンネルを形成し、訪れる人々を魅了する。森林内には20種以上の鳥類が生息し、その中には国家二級保護動物であるアカハラキンケイ(赤腹錦鶏)、シロハラキンケイ(白腹錦鶏)、および白冠長尾雉といった希少鳥類が確認されている。さらに、国家一級保護植物としてイチョウ(古木銀杏)があり、二級保護植物としてクスノキ、コノテガシワ、ヒノキが分布するなど、植物相も豊かである。
万ムー桜園はカルスト地形の発達した地域に位置し、紅楓湖を取り囲む山々の奇峰と相まって独特の自然景観を生み出している。また、周辺地域にはプイ族やミャオ族をはじめとする少数民族が居住し、伝統的な祭礼――「六月六」「四月八」、花祭り、地祭り芝居など――が今なお受け継がれている。ミャオ族の芦笙舞やプイ族の山歌は古風で素朴、かつ神秘的な魅力を放ち、民族工芸としては刺繍、ろう染め、織布、葦笛、伝統衣装など多彩な文化資源がある。さらに、農家料理や郷土色豊かな特産料理は訪問者の舌をも楽しませる。
中日友好桜園の建設
平壩農場近郊の天龍屯堡古鎮には、2007年に「中日国交正常化35周年」を記念して日中両国が共同で整備した「中日友好桜園」がある。この事業は、日本の衆議院議員で元経済産業大臣の二階俊博氏と、中国国家観光局局長の邵琪偉氏が共同で提案し、貴州省政府の全面的な支持を得て実現したものである。
2007年3月18日、平壩県天龍鎮において起工式が行われ、50余ムーの敷地に「中日友好桜園」が正式に建設された。式典では日中双方の代表者が友好協力の象徴として桜を植樹し、園内には日本から移植された2000本以上の貴重な晩桜が根付けられた。これらの多くは北海道産のオオヤマザクラであり、4月下旬にようやく開花する遅咲き品種である。花期は長く、花弁は幾重にも重なり、大輪で立体感のある花姿が特徴で、両国の友好の証として訪れる人々を楽しませている。