安順市

天台山

2018-06-04

安順市天龍鎮に所在する天台山は、平壩県の南西約15キロメートルに位置する。標高約60メートルの山で、周囲はほぼ全て断崖に囲まれ、一条の小道を除けば登攀は困難である。山頂へ至る山道には階段が設けられており、その姿があたかも天空へと通じる「台」に見えることから、天台山の名が与えられた。


山頂には、1590年に建立された伍龍寺が所在する。伍龍寺は仏教と道教の要素を併せ持つ「釈道合一」の宗教施設として知られ、幾度にもわたる改築を経て今日に至っている。山頂の限られた空間を巧みに利用し、複数の堂宇が建てられ、さらにその周囲を城壁で囲むことで宗教的機能に加え軍事的防御機能も兼ね備えていた。このような石造建築様式は貴州において稀有であり、建築学の観点からも「石造建築の模範」と称されている。


大仏殿正面の一室には、明末清初の武将・呉三桂(1612–1678)が残したと伝えられる朝服・朝笏・宝剣が保存・展示されている。史料によれば、呉三桂が伍龍寺を訪れ、当寺の僧であった叔父・呉鳳にこれらを託したとされ、さらに彼自身がこの地で一泊した記録も残されている。この伝承は、伍龍寺が地域史のみならず、明清交替期の歴史的文脈においても注目すべき拠点であったことを示している。




補筆・再構成:大橋 直人