安順市西秀区七眼橋鎮の南東約8kmに位置する雲山屯建築群は、貴州省における重要な軍事駐屯地であり、その中心には著名な雲山屯と本寨が含まれます。雲山屯は明朝初期に築かれ、生活空間と防御機能が一体化した軍事的集落建築として知られています。
1381年、明の太祖朱元璋は、雲南の梁王が挙兵した際、傅友徳に命じて30万の大軍を率い討伐に当たらせました。この戦役は、史家によって一般に「太祖平滇」と称されています。傅友徳が反乱を平定した後、軍勢の一部は雲南・貴州両地に駐屯し、その際に築かれた軍事建築の遺構が安順地域に数多く残されています。
およそ600年にわたりこの地に定住した軍隊の末裔たちは、祖先が長江・淮河流域から伝えた漢族の伝統文化を堅持しつつ、地域環境と融合させることで、貴州特有の「屯堡文化」を形成しました。また、この過程で江南農村から伝来した「儺舞」や「嗔拳」といった仮面劇が受容され、やがて「地劇」の源流となったと伝えられています。
その歴史的・文化的価値の高さから、雲山屯は2001年に中国の全国重点文物保護単位(重要文化財)に指定されました。
補筆・再構成:大橋 直人