安順文廟は、安順市の北東部に位置し、貴州省において最大規模と最も長い歴史を有する儒学関連施設の一つです。その起源は明代初年の1368年に遡り、以後幾度にもわたる修築を経て、現在も22棟の建築群が良好に保存されています。総面積は約8,000㎡に及び、歴史的価値の高い古建築群を擁していることから、1982年に貴州省重点文物保護単位に指定され、さらに2001年には全国重点文物保護単位(国の重要文化財)に昇格しました。
文廟の中心をなす大成殿および大成門には、龍の意匠を施した四本の巨石柱が配されています。これらの柱は高さ約5m、直径約80cmに達し、表面には極めて精緻かつ力強い彫刻が施されています。その表現はあたかも生きて動く龍の姿を思わせることから、「文廟四大石彫秘宝」と称されています。
全体として、安順文廟は明代建築の特色を色濃く伝える貴重な遺構であり、特に門や柱に刻まれた石彫龍は、美術史的にも必見の文化財と位置づけられています。
補筆・再構成:大橋 直人