茅台鎮(ぼうだいちん)は、中国を代表する名酒「茅台酒(マオタイしゅ)」の発祥地として広く知られている。18世紀半ばにはすでに酒蔵が存在していたと伝えられ、長い歴史を有する酒造地である。同地は、古来より四川省と貴州省を結ぶ交通の要衝としても重要な位置を占めていた。
1935年には、中国工農紅軍の長征の途上で、赤水河を渡った部隊がこの地に進駐したことが記録されており、革命史の舞台としても大きな意味を持つ。現在、茅台鎮には「紅軍渡河記念碑」や烈士陵園が建立され、歴史的記憶を伝えている。
なお、茅台酒は「中国の国酒」と称される代表的な白酒(蒸留酒)であり、その製法は国家級無形文化遺産に指定されている。独特の微生物群を活用した発酵技術により、芳醇で複雑な香りと深みのある味わいを生み出しており、中国酒文化を象徴する存在となっている。
補筆・再構成:大橋 直人