翻訳：郭 逸斐
修正：須崎 孝子
監修：姚 武強
補筆・再構成：大橋 直人
「多彩貴州風（たさいきしゅうふう）」は、中国政府が推進し、市場主体が運営する大型の歌舞劇であり、貴州省を代表する民族歌舞詩である。その壮大さと芸術性から、世界的にも高く評価される民族舞台叙事詩とされる。本公演は、貴州に暮らす17の少数民族から選ばれた約800名の出演者によって構成され、彼らの真心と芸術的熱意によって創り上げられている。
これまでに4700回を超える公演を重ね、米国、フランス、カナダ、イギリス、ロシア、韓国、ハンガリー、スイス、ポーランド、チェコなど、30か国以上で上演されてきた。また、北京・上海・香港・マカオ・台湾を含む中国国内40都市以上を巡演し、国内外で大きな反響を呼んでいる。
さらに、2011年から2019年にかけて、中央宣伝部・商務部・文化部・財政部・国家ラジオ映画テレビ総局によって「国家文化輸出重点プロジェクト」に継続的に認定された。とりわけ、貴州省で唯一「2017–2018年度国家文化輸出重点プロジェクト」「2019–2020年度国家文化輸出重点企業」として選定され、また国家の複数部門が共同で発表した「国家文化観光重点プロジェクトリスト」にも登録されている。これにより「多彩貴州風」は、国際社会における「貴州文化の名刺」としての地位を確立したといえる。
海外においても高い評価を受け、カナダのハーパー首相やイギリスのブレア首相からは「世界で最も生態的な歌舞公演の一つ」と称賛された。韓国の国務総理も「深い感動を覚えた。魂を揺さぶられたのは俳優たちの演技だけでなく、作品が日常生活を題材としており、そこに貴州の豊かな民族文化の伝統が余すところなく表現されていたからだ」と評している。
公演の本拠地である貴陽市の北京路劇場には、韓国の元国務総理や台湾の新党主席、国内最大手の演出会社の関係者、さらには米国・オーストラリア・韓国からの観客までが訪れている。また、中国系の著名法医学者李昌钰博士をはじめ、多くの著名人や一般市民が足を運び、そのたびに高い評価が寄せられている。
「多彩貴州風」は、苗族・布依族・トン族・イ族・水族をはじめとする多様な少数民族の文化を基盤とし、彼らが持つ独自のロマンティシズムと芸術性を舞台上に結晶させた作品である。その中核をなすのは、世界的にも希少で複製不可能なトン族の大合唱（トン歌）、少数民族に伝わる高度な技芸、独特の器楽演奏、さらに華麗な民族衣装を用いた舞台美術である。これらの要素が融合することによって、「大地を遍歴し、美しき貴州に酔う」という壮大な叙事詩を描き出している。
本作品は、貴州に息づく深い文化的遺産を体現するものであり、その厚みある文化的伝統は、地理的な山岳による隔絶を越えて世界に響きを広げている。公演のたびに新たな魅力を放ち、観客に強い印象を与えてきた。それは単に貴州の豊かな民族文化を外部に示すだけでなく、世界の人々に貴州への関心を喚起し、さらに重要な点として、貴州の人々自身に故郷の価値を再認識させ、自らの郷土への愛着を深める契機ともなっている。
多彩なる民族文化の宝庫 ― 貴州
貴州はしばしば「民族の首都」と称され、さらに「文化千島」とも呼ばれる。ここには49の民族が居住し、そのうち17民族が世襲的に定住している。少数民族人口は全体の約38％を占め、年間を通じて祝祭は1000件以上、そのうち大規模なものだけでも100件余りにのぼる。この豊かな文化的景観は、世界観光機関の関係者から「人と自然が高度に調和した絵画のような地域」と評されてきた。
この地には、中国最大規模のミャオ族集落である雷山西江千戸苗寨をはじめ、寒武紀生命大爆発の三大遺跡の一つとされる台江八郎古生物化石群、さらに世界最大の天然橋である黎平天生橋など、自然・歴史・文化が織りなす多様な景観が存在する。また、最古の「姉妹節」（ミャオ族の恋愛・婚姻に関する祭礼）や、神秘的な文化遺物「摘泰吉」、さらには象形文字文化の最後の領域とされる水族の「水書」など、無形・有形の文化遺産が数多く残されている。
「ここでは草が舞い、石が歌う」と表現されるように、貴州の村落文化は今も息づいている。布依族の村落では宋代に起源をもつ講釈芸術「八音坐唱」が受け継がれ、トン族の「大歌（多声部合唱）」は複調的な構造によって、国外における中国伝統音楽観を刷新した。また、反排木太鼓の力強い舞踊は、かつて西欧や北米にも紹介され、大きな反響を呼んだ。現在、貴州省において国家級非物質文化遺産に登録されている項目は38件に達している。これらはいずれも人々の日常的な祭礼や行事に根ざした、生きた文化の証左である。
その文化的精華を舞台芸術として集約したものが、大型歌舞劇「多彩貴州風」である。22の少数民族による多声部民謡や「原生態」の歌舞、素朴でありながら心のこもった民族衣装の数々が織り成す舞台は、まるで「生きた非物質文化遺産博物館」とも言える。
貴州省委員会常務委員・宣伝部長の李軍氏は、この作品について次のように述べている。
「長きにわたり閉鎖性と立ち遅れは、貴州の美しい少数民族文化地図の代名詞とされてきた。しかし、文化の輝きは失われることなく、むしろ『多彩貴州風』という舞台芸術の中において、貴州の多彩な文化と詩情あふれる故郷の風景は高度に凝縮されている。」
「原生態」という概念は、派手な演出や固有の生活環境から切り離された瞬間に、その本質を失う。すなわち舞台上に「純粋な原生態芸術」は存在し得ないのである。実際、本格的なフィールドにおける芸術表現の影響力や訴求力は必ずしも大きくはない。
丁偉は、多くの「原生態」芸術の実践を経て次のように論じている。民族民間芸術は、茅台酒のように生活の中で発酵を重ねることで、新しい芸術形態へと昇華する。「原生態」芸術が生活世界から舞台へと移行する過程では、長い歴史を通じて民族生活に刻まれた文化形態が保持されつつ、芸術家による加工と精錬を経て、民族文化を代表する典型的な表現へと高められる。それは日常の意味を内包しながらも、より精緻で、典型的で、美しく、かつ高次の美学的水準を備え、観衆にとっての審美対象となる。
「多彩貴州風」の舞台において注目されるのは、まさにこの「芸術化」と「精錬」の営為である。たとえば「中国最後の銃手の部落」と呼ばれる岜沙苗寨の男性たちは、頭髪を結い上げ、刀を帯び、猟銃を肩に掛け、リズミカルな歩みで舞台に登場する。強い白黒のコントラストと緊密なリズム、美しい肢体表現に、現代舞踊の要素を融合させることで、「銃手部落」という神秘的かつ古層的な文化を鮮烈に描き出している。この演目「岜沙邦哟生」は、創作意図と構成の完成度において専門家から高い評価を得た。
また、「蝉の歌」と題されたトン族の大歌の演目では、幼少期から歌を学んできた地元の農民歌い手が出演するが、その表現は日常的な「歌会」とは一線を画す。彼らの歌唱は高度に「凝縮」され「強化」されており、素朴さと自然さを保ちながらも、複調的ハーモニーの美を極限まで高めている。
すなわち「原生態」は資源として舞台芸術に取り込まれ、審美的追求と創造的情熱の中で再解釈される。粗野に見える現実は詩的に昇華され、そこから新たな価値と美感が誕生するのである。「多彩貴州風」は約120分の上演時間と数十メートルの舞台空間において、純朴で古風な生活世界と現代的な精神的洗練を併せ持ち、21世紀における現代文明の視座から民族文化の「真の現状」を提示しているといえる。
中国芸術研究院宗教芸術センター主任であり、『芸術評論』編集長、中国芸術研究院学術委員会委員でもある田青氏は、大型民族歌舞詩『多彩貴州風』について次のように評している。
「『多彩貴州風』は極めて完成度が高く、色彩豊かで美しい舞台芸術作品である。まさに“多彩なる貴州”を余すところなく表現している。視覚的にも聴覚的にも壮大な文化の饗宴であり、その規模と完成度において『雲南印象』に匹敵する価値を有している。舞台では、多彩な舞踊の美しさ、華麗な衣装、そして出演者たちによる鮮やかな演技を通じて、少数民族の絢爛たる文化が力強く示され、観客を強く魅了した。また、その表現には言葉にしがたい深い感動が込められている。」
韓国の著名芸能企画会社GMC文化交流社の張容基監督は、『多彩貴州風』について次のように評価している。
「本公演における舞台美術、照明、音響、衣装、そして俳優たちの演技や素養は、いずれも国際的な水準に達している。なかでもアヨド（少数民族歌手）の歌声は極めて甘美で、心から感動を覚えた。全体のプログラムはきわめて魅力的であり、その舞踊表現は、世界的に高い人気を誇るアイルランド民族舞踊にも匹敵する完成度を備えている。私たちは、この作品を韓国の観客に紹介できると確信しており、『多彩貴州風』が韓国市場においても成功を収めることを信じている。」
中国民族博物館副館長であり、同館民族服飾研究設計センター主任の韋栄慧氏は、次のように評価しています。
「大型民族歌舞《多彩貴州風》は、貴州の多彩な民族衣装を華やかに表現しています。海外公演においても常に観衆の心を揺さぶり、その視線を惹きつけ、大きな反響を呼んできました。特に貴州省東南部に居住するミャオ族の衣装は、業界関係者から“高級服”と称され、その精緻さと華麗さによって貴州民族衣装の魅力を端的に示しています。」
大型民族歌舞《多彩貴州風》は、貴州の民族文化を基盤としつつ、民間文化・生態文化・歴史文化をハイテク技術、先進的な舞台理念、そして現代的な演出手法と融合させた総合芸術作品である。本作品は、中国大地に固有の自然環境や文化的背景を鮮やかに表現すると同時に、多民族社会としての中国文化の多層性と多様性を具現化している。
