貴陽市

黔霊公園

2018-06-03

黔霊公園は、檀山・白象山・大羅嶺などの山々から構成される自然公園であり、標高約1,400メートルの黔霊山の中腹に位置する。園内には奇岩や老樹が数多く存在し、古くから景勝地として知られてきた。山頂には、清代康熙11年(1672年)に高僧・赤松和尚によって創建された弘福寺が今も残り、仏教文化の拠点として信仰を集めている。


公園の面積は約300ヘクタールに及び、園内では1,000種を超える薬木・薬草が確認されている。これにより、黔霊公園は単なる観光地にとどまらず、貴州省における薬用植物の多様性を示す生態学的にも重要な地域となっている。園内のトンネルを抜けると黔霊湖が姿を現し、さらに「聖泉」と呼ばれる湖も点在する。この湖は、訪れる人によって水位や水量が変化すると伝承され、不思議な霊性を宿す場所として語り継がれている。


また、公園内の「麒麟洞」には、国共内戦期において楊虎城や張学良らが幽閉されていたとされ、近代中国史の重要な舞台の一つともなっている。このように黔霊公園は、自然景観・宗教文化・近代史の諸側面を併せ持つ多層的な文化空間として位置づけられる。



補筆・再構成:大橋 直人