貴陽市は、中国西南部に位置する貴州省の省都であり、政治・経済・文化、さらには交通の中心地として重要な役割を担っている。略称は「筑」で、これは古代に当地に存在した「筑州」に由来する。地理的には、貴州省の中部、烏江の支流である南明河の流域に位置し、1930年に正式に市制が施行された。
市域の総面積は約8,032平方キロメートル、人口は311万4,300人(資料時点)を数える。都市名「貴陽」は、「貴山の南に位置する陽(太陽の当たる場所)」に由来し、風水的・地理的観念に基づいた命名である。
貴陽は標高約1,070メートルの盆地状の地形に立地し、四方を山地に囲まれた「山城」としての特徴を有する。そのため亜熱帯湿潤気候に属しながらも、夏は比較的涼しく、冬も温暖である。年間平均気温は15.6℃であり、豊かな緑に恵まれた環境から「森林都市」とも称される。こうした気候条件は、避暑地としての価値を高めるとともに、観光地としての魅力を形成している。
さらに、貴陽は古来より西南地域の交通結節点として栄えてきた。明清期には川・道を利用した物流の要衝であり、近代以降は鉄道網の発展により「西南の鉄道要地」と呼ばれた。今日においても、中国西南部を東西南北に結ぶ交通ハブとしての機能を果たしており、その地理的優位性は経済発展の基盤となっている。
補筆・再構成:大橋 直人