翻訳:朱 明賢
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
服飾は、長角ミャオ族文化を象徴する重要な要素であり、外部との双方向的な交流においても大きな役割を果たしています。
なかでも特徴的なのが、女性が身に着ける“長角”を思わせる頭飾りです。これは、白色の木製で新月形をした大きな櫛で、その周囲に髪をぐるぐると巻き付けることで、横から見ると「∞」のような形が生まれます。この独特の造形こそが、長角ミャオ族女性の服飾文化を象徴するものといえます。
長角ミャオ族について
「長角ミャオ族」という呼称は、彼ら自身の言語で「ムーソン(Mu thong)」と呼ばれる言葉に対応します。
民族の歴史と移動の過程をたどると、古くからミャオ族には「髻首(けいしゅ)」と呼ばれる髪型の風習があったことが分かります。これは、麻縄を髪に編み込み、頭頂部に大きなまげを作るものです。かつては男性も木製の角状頭飾をかぶっており、その高さは約15センチ、長角の長さはおよそ50センチに及びました。髪を整えた後、長角の両端は耳の下から肩にかかる位置まで垂れ、肩幅を超えるほどの大きさとなります。完成した髪飾りの重さは通常2〜3キログラムで、最も重いものでは6キログラムに達しました。
現在でも、長角ミャオ族の女性はこの伝統的な髪飾りを受け継いでいますが、経済・社会の発展や周辺民族との交流・融合の影響により、男性の頭飾りや服装は大きく変化しました。現代では、日常的な服装は漢民族とほとんど変わらず、結婚式や葬儀など特別な儀礼の場でのみ、男性は伝統的な民族衣装を着用します。
ミャオ族の衣装は種類が多く、制作技術に優れ、色彩も豊かで多様です。その意匠や装飾には、彼らの文化的伝統や生活・生産活動が色濃く反映されています。
長角ミャオ族の女性服飾
長角ミャオ族の女性が着る上着は、中丈の衣服で、襟は後ろに傾き低めに作られています。袖口は広く短めです。日常着は空色や黒色の布地を用い、装飾は施されません。晴れ着には、自家染めの土布や、紫金色に染めた絹織物が使われます。
娘や若い女性の晴れ着の上着や背中部分には、桃の花や精緻な刺繍模様がふんだんに施されます。青・赤・黄・紫・緑などの色糸で四角形の花模様を作り、その上部には三組の横長花柄布を背中の襟に連ねます。下部には五組の布を左右対称に配置し、さらに四角形の両側には三組の対称模様を腰部分につなぎます。襟元と胸部には「蚕娘図」と呼ばれる意匠が配されます。
下衣はプリーツスカートで、青黒色のプリーツ(長さ約80センチ)とスカート本体で構成されます。スカート地は長さ13〜18メートル、幅60センチの布を赤紫色に染め、裾(幅15〜20センチ)には人形文様、水玉文様、ウキクサの花文様などが施されます。秋冬には赤いゲートルを巻き、晴れ着には腰掛け布を合わせます。
最も盛装する場面では、銀製の衣服やマフラー、鳳凰形の銀冠、銀簪、銀のイヤリング、首輪、腕輪、指輪などを身に着けます。これは、長角ミャオ族における銀飾の中でも最も種類が多く華やかな様式の一つです。
長角ミャオ族の男性服飾
男性の上着は襟のないゆったりとしたデザインで、袖も幅広く、身頃とは緩やかな角度を成しています。下衣はスカート状で、全体として連衣装のような構造になっています。両袖には土色の布があしらわれ、全身には刺繍が施されています。
背面の中央には、正方形の枠を斜めに配置し、その内部には太陽文様や円環状の龍文様が描かれます。枠の四辺には紅葉文様や蝶文様が配され、枠の外側四隅には鳳頭竜身図や異形の龍図があしらわれます。袖部分には龍の図案が多く、さらに飛鳥や異形の動物を描いた意匠も見られます。
全体のデザインは、豊かな図案とともに原始的で古風、かつ質朴な趣を持ちます。地色には緑の絹織物を用い、オレンジ・黒・淡黄色・白の花飾りを基調とした色彩が組み合わされています。こうした衣装は長角ミャオ族の服飾の中でも特に精緻な逸品とされ、主に祖先を祀る大典において、儀仗隊として芦笙を吹く男性が着用します。