民族文化

長角ミャオ族のトーテム崇拝

2021-02-18


翻訳:朱 明賢

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:大橋 直人



長角ミャオ族(特に梭戛〔ソガ〕地域)には、動物・植物・鬼神といった多様な対象への信仰が見られ、これらは彼らの世界観や社会構造と密接に結びついている。




1、動物崇拝



梭戛のミャオ族の家屋の壁には、しばしば牛の角が掲げられ、日常的に礼拝の対象とされる。牛は農耕や運搬の労働力としてだけでなく、祭礼・葬儀などの重要な儀式にも不可欠な存在である。特に、跳花祭や葬祭においては、牛を捧げる祭祀が重視される。

長角ミャオ族の女性が身につける長く反り返った角状の頭飾りは、この牛の角を象ったものと考えられ、トーテム的象徴性を持つ可能性が高い。こうした風習は、家畜や野生動物への原始的アニミズム(精霊信仰)の一形態と位置づけられる。





2、植物崇拝



長角ミャオ族の祖先は、歴史的に外敵から逃れるため森林内部に移住し定住したと伝えられる。彼らはこれを「山の神が自分たちを守ってくれた」と解釈し、山や森への信仰を深めていった。

村ごとに「神の森」と呼ばれる聖域があり、その中心には一年を通して青々と茂る大木が立つ。この大木は村の守護神の象徴であり、毎年一定の日に集落の男性だけで礼拝を行う(女性の立ち入りは禁じられる)。この禁忌は、祭祀空間の神聖性を保つとともに、儀礼参加者の役割分担を明確化する社会規範として機能している。





3、鬼神崇拝



長角ミャオ族の宇宙観では、この世界は人間と鬼神が共存する空間とされる。彼らにとって「鬼」と「神」の概念は必ずしも明確に区別されず、鬼にも善悪があると考えられている。

一般的に、家で安らかに亡くなった者は善い鬼(守護霊)となり、人々を守護する。一方、屋外で事故や不慮の死を遂げた者は悪い鬼となり、人間に災いをもたらすとされる。


彼らが分類する鬼の主な類型は次の通りである。


1、凶喪鬼
転落死、暴力による死亡、圧死など、不慮の事故死を遂げた者の霊。

2、拴騎鬼

生前に定住地を持たなかった流浪者の霊で、死後は洞窟に潜むとされる。

3、遷棺桶鬼
風水的に不適切な棺の埋葬地を移す際に生じる鬼。古い棺が空になると、ある鬼が土中を通ってその棺に入り込み、夜間に人の体を圧迫するような感覚を引き起こすと信じられている。

4、天竜地丼鬼
天の神が天龍や天馬に乗って通りかかり、偶然地上の茶碗を踏み割ることで発生する災いの鬼。この場に居合わせた人は驚愕し、病にかかるとされる。