民族文化

長角ミャオ族の伝説

2021-02-18

翻訳:朱 明賢

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:大橋 直人




1、 起源伝説



長角ミャオ族の間には、洪水神話に基づく独自の起源譚が語り継がれている。


昔、この地は平坦で溝もなく、一面の大地が広がっていた。ある年、大洪水が起こり、地面は水に覆われ、多くの人々が溺死した。生き残ったのは兄妹二人だけで、彼らは太鼓の中に身を隠した。太鼓は水に乗って漂い、風と波がその胴を叩くたびに「ドン、ドン」という音が響いた。この音は天上の雷神の耳に届き、雷神は「地上の者は、洪水に浸かりながらも太鼓を打ち鳴らすとは見事だ」と感嘆した。


雷神は太鼓が水流に押されて天に衝突することを恐れ、地上にいくつもの穴を開け、水をそこに落とし込んだ。やがて洪水は引き、大地は乾いたが、穴を開けたために地形は平坦ではなくなり、多くの山々が現れた。


洪水の後、地上には兄妹しか残っていなかった。兄は子孫を残すため妹と結婚しようと提案するが、妹は「地上の二つの大石を一つにできたら承知する」と条件を出した。兄は二つの石を重ね合わせ、これが後に石臼と呼ばれるようになる。妹はこれを天意とみなし、結婚を受け入れた。


やがて妹は身ごもったが、産まれたのは子どもではなく大きな肉塊だった。妹は怒って刀でそれを細かく切り刻んだところ、その破片が次々と人の姿になった。これらの人々が現在の長角ミャオ族の祖先であり、以来彼らは山中で暮らし続けている。





2、「長角」形成伝説



長角ミャオ族女性の頭飾りである長く反り返った角状の装飾には、複数の起源説が伝わっている。


1、苗王の弓矢説
かつて苗王が山中で狩猟中に獣に襲われ、命を落とした。人々は苗王を埋葬し、その墓に弓を立てた。以後、人々は追悼の際に木の枝を切って頭に載せ、弓矢を象徴して漢族の侵入を防いだ。やがて枝は丸櫛に加工され、これが現在の長角の原型となった。


2、牛崇拝説
牛は農耕に不可欠な家畜であり、長角ミャオ族に深く尊敬されてきた。その信仰の表れとして、木製の角を頭に装着する習慣が生まれた。


3、獣避け説
居住地が森林に覆われ野生動物が多かったため、木製の角を装着して獣を威嚇・避ける目的で用いられた。


4、戦乱・同族識別説

戦乱の中で木製の角は民族的標識として機能し、逃避行の際でも同じ角を着けた者同士で同族を見分けられた。