翻訳:朱 明賢
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
名称と語源
長角ミャオ族は、自称を Hmongb Rongt とし、中国語では「箐苗(せいびょう)」と訳される。「箐」とは森林を意味し、「箐苗」とはすなわち「森林に暮らすミャオ族」を指す名称である。
外見的特徴と命名の由来
この支系に属する女性は、木製の大きな櫛に自身の髪と黒い毛糸を幾重にも巻き付けて独特の髪型を形成する。この毛糸には、母親や祖母の髪の毛を混ぜ込む習慣があり、世代を超えた連続性を象徴している。髪型は長く湾曲した角に似ており、これが「長角ミャオ族」という呼称の由来となっている。
居住地と人口
長角ミャオ族は主に貴州省六盤水市六枝特区に属する梭戛(Suōgā)ミャオ族・イ族・回族郷の十二の寨(集落)に居住する。具体的には、中底寨、化董寨、後寨、苗寨、小興寨、高興寨、補空寨、小田壩寨、隴戛寨、新発寨、安柱寨のほか、周辺の集落を含めて総戸数は約990戸、人口は4,000人余に達する。
地理的環境と文化保存
彼らは標高約2,000メートルの高原山岳地帯に長年居住してきた。この隔絶された地理的環境が、外来文化や政治的干渉から集落を守り、言語・衣装・祭礼など伝統文化の高度な保存を可能にした。
1997年には、中国とノルウェーの文化協力事業として「中国貴州梭戛ミャオ族生態博物館」が設立された。これは中国初の「生きた博物館(Living Museum)」形式を採用した民族文化保護プロジェクトであり、長角ミャオ族の生活様式・口承伝承・祭礼儀礼などを現地で保存・展示する試みとして高く評価されている。
補足
長角ミャオ族は、ミャオ族の中でも髪型文化を民族的アイデンティティの中心に据える稀有な事例として注目される。髪に祖先の毛髪を組み込む習慣は、東南アジアの一部高地民族や太平洋諸島の一部社会にも類似事例が見られ、祖霊崇拝・身体文化・世代間継承の交点を示す貴重な民族誌的資料となっている。