翻訳:陳 応梅
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:大橋 直人
ミャオ族の手芸
刺繍
ミャオ族の伝統的手芸の中でも、最も代表的なのが衣服を飾る刺繍である。図案は極めて多彩で、竜・鳥・魚・銅鼓・花・蝶など、神話や自然に由来するモチーフが多く用いられる。ミャオ族刺繍は精緻さと鮮やかな色彩感覚に特徴があり、その技法は少なくとも12種に分類される。
主な技法には、平刺繍、クロスステッチ、堆刺繍、鎖刺繍、貼布刺繍、打籽(種点)刺繍、破れ糸刺繍、釘糸刺繍、绉(ちりめん)刺繍、辫(組紐)刺繍、錫糸刺繍、蚕糸刺繍がある。これらは単なる装飾ではなく、家系の伝承や吉祥の願い、さらには婚姻や祭礼の場面における象徴的意味を帯びる。
学術的補足:民族服飾研究において、ミャオ族刺繍は「記録媒体」としての機能を持つとされ、口承神話や歴史的記憶を視覚的文様として保存する役割を担う。特に女性による刺繍は、世代間の文化伝承の重要な媒体である。
蝋染め
蝋染めは、貴州省丹寨県・安順県・織金県を中心に伝承されてきた伝統染色技法である。溶かした蝋を蝋刀で布に描き、青インディゴで染色し、沸騰水で蝋を除去すると、布地に「青地白花」あるいは「白地藍花」の文様が浮かび上がる。染色の過程で蝋が自然にひび割れることで生じる「氷紋」は、偶然性と美的魅力を併せ持つ独特の効果である。
蝋染め製品はもともと自家使用を目的として制作され、女性服、寝具(シーツ、掛け布)、被面、包布、スカーフ、リュックやバッグ、背帯(子どもを背負う帯)、さらには葬送用の布など、多岐にわたる生活用品に用いられてきた。
学術的補足:蝋染めは中国南部の少数民族に広く見られるが、ミャオ族の蝋染めは特に図案の細密さと構図の複雑さで知られる。文様はしばしば植物・動物・神話的存在を組み合わせ、象徴的な意味を込めて構成される。
銀飾り
ミャオ族にとって銀飾りは、美の基準において「大きさ」「重量感」「数量」「精緻さ」が重視される。銀製品の図案には呪術的・宗教的意味を持つものが多く、トーテミズムに基づく動植物の意匠も目立つ。銀は光明と正気を象徴し、銀飾りを身に着けることには魔除け・厄除けの効能があると信じられている。
主な銀飾りの種類:
⚫︎頭飾り:銀角、銀扇、銀帽、銀围帕(額布)、銀飘頭排(垂飾)、銀簪(かんざし)、銀插針、銀頂花、銀網鎖、銀花櫛、銀耳輪、銀童帽飾り
⚫︎胸・首飾り:銀首輪、銀圧領、銀胸板、銀胸吊飾
⚫︎手飾り:銀腕輪、銀指輪
⚫︎衣服飾り:銀衣片、銀腰鎖、銀バックル
⚫︎背飾り:銀背吊、銀背札
⚫︎腰飾り:銀ベルト、銀腰吊飾
補足:銀飾りは単なる装飾品ではなく、婚礼や祭礼時には家の財力・職人技術・家系の格式を示す重要な文化資本として機能する。また、銀器の制作は高度な鍛金技術を要し、特定の職人階層によって代々継承されてきた。
ミャオ族の服飾
ミャオ族の民族衣装は、大きく子ども服、日常着、晴れ着(礼装)の三種に分類される。これらは総じて、伝統的な織布、刺繍、クロスステッチ、染色といった高度な手工芸技法を今なお保持している。
造形面では、中国伝統の線描様式、あるいはそれに近い単線による輪郭線を用いた意匠法が採用され、文様は明確で簡潔ながらも象徴性を帯びる。
制作技術の分類上は、服飾史で知られる五種の形制——編製型、織製型、縫製型、接合型、裁断型——のすべてを含み、時代的・地域的変遷を反映している。
色彩に関しては、強いコントラストを持つ色の組み合わせに巧みであり、深みと光沢感のある色調を追求する傾向がある。特に使用頻度が高いのは赤・黒・白・黄・青の五色で、これらはしばしば儀礼的・象徴的意味を伴う。
構図面では、単に主題を強調するのではなく、衣装全体としての色彩と意匠の調和が重視される。このため、部分的装飾の豪華さよりも、全体の均衡美とまとまりが評価される傾向にある。
補足:ミャオ族の服飾は、単なる日常の衣類ではなく、婚礼・葬礼・祭礼・年中行事といった儀礼体系と密接に結びつく「象徴体系」として機能する。色彩や文様はしばしばトーテム的信仰、祖先崇拝、豊穣祈願などの意味を帯び、衣装自体が一種の「可視化された民族史」として位置づけられる。また、織・刺繍・染色の各技法は世代を超えて女性によって継承され、地域ごとに異なるスタイルを形成している。