民族文化

ミャオ族の概況

2021-02-18

翻訳:楊 国花

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:大橋 直人



ミャオ族はきわめて古い歴史を持つ民族であり、その分布は中国国内にとどまらず、世界各地に及んでいます。中国では主に貴州省・湖南省・湖北省・四川省・雲南省・広西チワン族自治区・海南省などに居住しており、さらに東南アジアのラオス・ベトナム・タイなどにも広く分布しています。近代以降は海外移住の動きが進み、欧米諸国にもミャオ系のディアスポラ(離散共同体)が形成されています。


歴史文献の記録や口承伝承によれば、ミャオ族の祖先はかつて黄河中下流域に居住していたとされ、その祖先神話には蚩尤(中国古代の伝説的部族首長)が登場します。古代伝承において、ミャオ族は「三苗」と称され、歓兜・共工・鯀と並んで「四罪」と呼ばれる部族の一つに数えられました(『尚書』や『史記』などに記録あり)。「三苗」あるいは「有苗」と称された人々は、黄帝の時代から堯・舜・禹の治世にかけて江漢平原へと移動し、その後、戦乱や政権交代を背景に徐々に南方・西方へと移住していきました。その結果、現在の雲貴高原や西南山地に定着するに至ったのです。さらに明・清時代には、一部が東南アジア諸国へ移住し、近代になるとこれらの地域から欧米へと渡る人々も現れました。


言語に関しては、ミャオ族は固有の言語であるミャオ語を有しています。これは漢蔵語系に属するミャオ・ヤオ語族の一支であり、内部的には大きく湘西方言・黔東方言・川黔滇方言の三大方言に区分されます。長期にわたる漢族との交流を通じて、多くのミャオ族が漢語を併用しており、地域によっては漢字文化の受容も進んできました。


宗教的世界観については、伝統的に自然崇拝と祖先崇拝を中心とした原始信仰が保持されており、これは今日に至るまでミャオ族文化の基層をなしています。一方、近代以降の宣教師活動によってキリスト教・カトリックを受容した地域も存在しますが、全体としては依然として伝統的宗教が強い影響力を持っています。


2010年に実施された中国の国勢調査によれば、中国国内のミャオ族人口は9,426,007人に達し、少数民族の中では第4位の規模を有しています。これは、ミャオ族が単なる地域的少数集団ではなく、中国の民族構成における重要な一角を占めていることを示しています。