老漢族は、中国南西部に居住する小規模な集団で、自らを「漢族」であると認識しています。その起源は明代にさかのぼり、当時この地に駐屯した兵士の子孫とされています。彼らは山地に囲まれた環境で長らく外部との交流を制限されてきたため、今日に至るまで明代の風習を色濃く保持しています。
女性の髪型や装飾には特有の習俗が見られます。女性は結婚すると白い鉢巻を頭に巻き、年齢を重ねると黒い鉢巻へと変えます。一般的に白い鉢巻は夫を亡くした女性が身につける喪のしるしとされますが、老漢族では由来が異なります。彼らの祖先は兵士であり、常に戦死の危険にさらされていたため、妻たちは「夫がいつ亡くなるか分からない」という緊張感を抱きつつ生活していました。そのため、結婚の時点から気を引き締める象徴として白い鉢巻を締める習慣が定着したと伝えられています。
さらに、老漢族では離婚は極めて稀ですが、離婚に至った場合には黄色い鉢巻を身につけるという独自の慣習が存在します。こうした鉢巻の色彩表現は、彼らの社会における家族関係や婚姻観、さらには歴史的背景を反映するものと考えられます。
補筆・再構成:大橋 直人