改訂:大橋 直人
油茶(ゆちゃ)は、トン族(侗族)の人々にとって、特別な出来事や来客があった際に振る舞われる、伝統的かつ象徴的な飲み物です。日常というよりは、祝いごとや儀礼的な場で飲まれることが多く、地域のの暮らしや価値観に深く根ざした存在です。
作り方はやや独特で、まず「油茶の木」の実から絞った油を使って茶葉を炒め、そこに水を加えて煮出します。その後、塩や砂糖を加えて味を調え、あらかじめ具材(揚げ米、ピーナッツ、干し豆腐、刻み野菜など)を入れておいた碗に、漉しながら注げば完成です。
渋みのあるお茶に塩味が加わった、少し複雑でクセになる味わいが特徴です。香ばしい具材とともに、湯気を立てながら一口ずつ啜ると、素朴ながらも心がほっと温まるような美味しさがあります。
この油茶は、地域ごとに材料や味付け、具材が異なり、トン族をはじめとする貴州各地の少数民族が育んできた多彩な食文化を映し出しています。